第213話 重なってるよ?

 ゼハールト家の長兄にして嫡男、そして父アリウス=フォン=ゼハールトに似た整った容姿を持ちながら、俺がゼハールト家に来る前の選民思想的な教育のせいで非っっっ常に残念な頭の持ち主…エリウス=フォン=ゼハールトが俺の前に現れた…。


 数年前に一度ぶっ飛ばした以来の再会ではあるが、エリウスは悪い意味で変わり無いようである。

 同じように残念な頭の持ち主のアイラ=フォン=ゼハールト…まあ姉なのだが、アイラが一緒にいないだけ面倒なのは半減…といったところか。面倒なことには全くもって変わりはないのだけれど…。


「しかしソレもここで終わりだ。王が貴様に罰を降すまでもない。お前を討つっ!今っ!ここでっ!私がっ!!」


 そして、こんな発言をする始末である…。一体どこのアスカさんなんだ?…で、なんですかね?エリウスは俺を魔王かなんかだと思ってるんですかね?


「俺を討つ…のは良いけど、俺………国王陛下に呼ばれて来てんだよ?その辺り…分かってる?」


 暗に「お前、国王の呼んでいる客に手を出して、ただで済むと思ってんの?」と教えてやる。………全然『暗』じゃねえ…。


 ちなみに数年前は騎士見習いだったエリウスはエクシア国立騎士大学校を無事卒業し、現在は正式に騎士となり、いくつか在る騎士団の一つに入団。騎士として活躍中?…らしい。

『いくつか在る』のは第一から第五まで騎士団が存在しているのだが、そのどこに所属しているかは知らないし、正直興味が無い。


「言っただろう……王が罰を降すまでもない、と…。愚かな愚弟は私が自らの手で討つっ!」


『愚』が重なっちゃっているけど大丈夫?


 しかし………面倒だな。どうする?シーバスがヤっちゃっても良いよ?


「ユーリウス様の命令でもそれはさすがに…」


 だよなぁ…。と思っていると城の方から知っている人の反応が…。これは…


「何をしているエリウス=フォン=ゼハールト」


 この場に登場し、そう言い放つのは昨日謁見の間で会った騎士団長のオッサン。

 どうやら騎士団長自ら俺たちを迎えに来てくれたようだ。そしてナイスタイミングである。


「団長。この愚弟は私が自らの手で決着を付けねばならないのです。愚弟に王や団長の手を煩わすワケにはいきません。ここは私にお任せをっ!」


 フンっ!…と何故か自信満々で答えるエリウス。それを聞き、団長は俺をチラリ…と見るが、俺は全力のアイコンタクト…「ヤったって、ヤったって」と伝える。

 伝わったかはわからんが…。


 団長はフゥ…と大きく息を吐き、やれやれ…というように軽く頭を振る。


「貴様は王の命を無視する…というのだな」


 ギラリ…と鋭い眼光をエリウスに飛ばし、団長は言い放つ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る