第211話 天を貫く…

 とりあえず、この部屋から逃げ出すのは諦めたが、俺は「まだだ、まだ終わらんよ」と某サングラスの大尉さんのように、変な方向に話が向かうことを阻止することは諦めていない。

 既にこの思考がフラグのような気がしないでもないが、諦めていないったら諦めていない。


「さて、お父様…」


 国王の持つGMソードに似た剣を片手に持ち、ハイライトの消えた瞳で国王に話掛けるリリアーナ王女。

 アカン…もう怖いんですけど。


「彼…ユーリウス君には何を話したのです?」

「いや、まだ特に何も…」


『ギラリ…』

「リリアーナが婚約関係の話を全部袖にしたってことだけ話しましたっ!」

「そう…」


 さっきも思ったが国王が弱い、弱すぎる。なんだか見ていて俺が泣いちゃいそうだ。…あと王女が怖い「ユーリウス君…」「ひゃいっ!」


「お父様が言ったことは本当かしら?」

「信用ゼロッ!?」


 国王、そのリアクションはいらないから。


「えっ~と…はい。ソレくらいしか聞いてませんね」


「そう…」


 そして王女の瞳に少しハイライトが戻る…と同時に悪寒も少し減った、か…。


「ならユーリウス君は帰っても良いわ。…また学校でね」


 ニコリ…その笑顔は前に学校で話した時の王女と同じ表情だったのだが、優しさより怖さを感じてしまうのは何故だろうか。………うん、仕方ないネ、逆らったらアカンヤツダヨネ。


「わかりました。リリアーナ王女、また学校で…。では国王陛下、私はお先に失礼させていただきます」


 俺は精一杯平静を装い、そう告げる。国王からは「貴様っ、裏切る気かっ!?」と言うような視線を受けるが、そんなものはものともせず、ソファーからスッと立ち上がり、速やかに退室。パタム…と控え室の扉を閉めたあとは『縮地』を駆使し緊急離脱。鬼のような速さで王城の出口へと向かった。


 控え室の扉を閉める瞬間、「お父様、正座…」と聞こえたような気がしたが、多分気のせいだろう…きっと…。

 俺が城を出た直後…城の一部から天を貫くような赤く長大な剣が出たのを確認したが、アレは多分リリアーナ王女の…いや、深くは考えまい。

 世の中には知らない方が良いこともある。


 こうして俺は無事、城を出たのだが…


 …とりあえずシーバスを探して、シバくか。と『マップ』を開く。このあとシーバスをヒートエンドしたのは言うまでもない…。


 そして翌日…


 当たり前と言うかテンプレなのか…兵士が宿に訪れる。


「ユーリウス=フォン=ゼハールト、登城せよとの王命である」


 聞いた瞬間、シーバスが宿の窓から『瞬動』で逃げ出そうとしたのを『縮地』で阻止。首根っこを掴んで抑え込む。

 そして俺は…


「了解しました…」


 諦めたような声で返事を返す…。

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