第210話 だが俺はまだ…
「ぐぬぬ…」、「う~~~ん…」、とそれぞれ別の意味で悩む国王セツナ=フォン=エクシアと俺ことユーリウス=フォン=ゼハールト。
それを困った顔をする宰相のオッサンとニヤニヤを隠そうとしつつ隠せていないシーバスが見守る。…いやいや隠せよシーバスは…。まあ、お前はあとでSTFで絞めるけどな…。
「そんなっ!?」みたいな顔しても許さんよ?
そして数瞬…。
『ゾクリ』
「「っ!?」」
突然激しい悪寒を感じる。
悪寒を感じたのは俺と国王だけのようだ。チラリと見ても宰相とシーバスは何も感じていないのがわかる。
どういうことだ?
俺は『危機感知』的なスキルは持っていないというのに…こんなに危険を感じるなんて。
何に…なのかわからないが戦々恐々としている俺と国王の二人。
そんな中…
『コンコンコン…』
「「っ!?」」
謁見の間隣に位置する控え室…俺たちのいる部屋に響くノックの音…。そして『ビクゥッ』とする俺と国王の二人。
間違いない…このノックをした人物が、この悪寒の正体…。
俺は『マップ』を展開し人物を確認する…って、えっ?これ…。
『マップ』の光点の色は青。青の表示ならば敵であることは絶対にありえないはず…。そして何より、俺の知っている人物だった…。
い、いかんっ!宰相のオッサン、その扉を開けては駄目だっ!…と俺が言うワケにもいかず…
「誰だ?今は陛下が…」『お父様…リリアーナです』
扉の向こうからリリアーナ王女の声が響く。
扉を挟んでいるからか、少しくぐもって聞こえるにも関わらず、その声には高貴さと優しさを感じる………はずなのに、何故か怖いんですが…。
「王女殿下?何故こちらへ…いえ、今開けます」
そして宰相のオッサンが扉を開く。
そこにはドレスに身を包み、金髪縦ロールを輝かせるリリアーナ=フォン=エクシア第三王女殿下が………国王の持つ『GMソード』に似た剣を持って立っていた…。
「リ、リリアーナ…ヴァーチェにいるんじゃなかったか?何故ここに…それより学校」「お黙りなさいお父様っ!」「………はい」
弱っ!?国王、弱っ!?
「宰相とユーリウス君のお付きの方は下がってください」
「「はっ」」
「それでは国王陛下、失礼します」
「ユーリウス様、失礼します」
失礼します…じゃないっ!?おまっ、俺を置いていく気かっ!?「ぷっ…」笑ったっ!?シーバスっ、おまっ、今笑ったろっ?あとで覚えとけよっ!?
『バタン』
無情にも二人が出ていった扉が閉まる音が控え室に響く。
チラリと国王を見ると「ああ…行かないでくれぇ…」と言わんばかりの表情。どうやら俺とシーバスと似たようなアイコンタクトでの会話があったようだ。
…だが俺はまだ諦めない。
「リリアーナ王女、それでは私もこの辺」「ユーリウス君」「はい、すんませんした」
秒で諦めたのは言うまでもない…。
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