第207話 で、ですよねぇ…

 伯爵級魔人、最大最強の攻撃らしい『魔人砲』を受け止め、魔力を使い果たしたのか魔人は既に虫の息である。


「はぁ………はぁ………くそっ…」


 う~~~ん、もう終わりっぽいし…わざわざ俺が止めを刺さなくても良いかなぁ~…なんて思っていると…


「はぁはぁ………俺の負け…だ。………殺せ」


 とか言いだす始末。う~~~ん、面倒くさい。


 チラリ…とシーバスを見るとコクリと頷くが、イヤイヤイヤ…何頷いてんだ。全然分かってないだろ?面倒くせえんだってっ。

 チラリ…と国王を見てもコクリ…。絶対分かってねえ…。


 いや………この頷きを良いように取ると「お前の好きにして構わん…」と取れないこともないのではないだろうか…。

 …となると、コイツを逃がしちゃっても文句言われないんじゃない?チラリ…と今度は魔人を見る。


 もう手足がプルプル震えて立っているのもやっとの状態である。………無理だな、逃がすのは。

 う~~~ん…。


『ぽんっ』

「よしっ、決めた」


 右手を握り、左手のひらを叩く。そして俺の出した答えは…


 ~~~~~~~~~~~~~~~~


「よろしかったのですか?」


 んあ?別に良いんじゃない?あのまま止め刺して経験値にしちゃうって手もなきにしもあらずだけれど、それよりも情報を取れるだけ取る方が良いだろうし…。

 それに…


 周りにいた貴族のオッサンたちのビックリした顔も見れたしな。


 そう…俺はあのあと、国王に丸投げした。

 あの魔人も脳筋で戦闘狂だったけど、負けを認めたら凄く潔かったし、持っている情報は出してくれそうだった。

 なによりビビり散らしていたくせに「さっさと殺せ」だなんだと煽ってくる貴族のオッサンたちが鬱陶しかった、というのもある。


 国王は国王で自身も含めての訓練やらストレス発散に魔人を使うらしい。

 …と言っても一方的にどうこうするのではなく、しっかりとした戦闘訓練やスパーリング的なモノにするつもりのようだ。


 まあ、捕らえた魔人を奴隷扱いするようなら俺は許さんし、城に『雷の鉄槌トールハンマー』をぶちかましただろうけど…。


 こうして俺は、魔人襲撃という件を終わらせ、城をあとにす『ガシィッ』………ガシィッ?

 肩を掴まれたので振り向くとそこにはニッコリと笑う国王陛下が…。

 ………見なかったことには出来ないだろうか?と頭を過るが、掴まれた肩からはギリギリ…と音がしそうである。…痛い。


「国王陛下…何か?」


「ユーリウス=フォン=ゼハールト………お前を呼んだ用事が、全然っ、全くっ、少しもっ、終わってないのだが…」


「………で、ですよねぇ…」


 ………うん、なんかアレだ………振り出しに戻る、的な?

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