第206話 VS伯爵級魔人⑥

「我が最大最強の一撃…受けてみろ」


 数年前に聞いたことがあるような台詞だな…主に義兄とか長兄とかから…。そんなことを思いつつ魔人を見やる。


 右手に集束した魔力…ただただ全開で攻めてくるだけの野郎かと思ったが、魔力を集束する辺り多少は技術面も鍛えたのだろう。防御技術は全然無かったけれど…。


 さてさて、この攻撃…どうするかな、と思考を加速させて考える。


 1、受け止める→結界内が滅茶苦茶になりそう。

 2、跳ね返す→やっぱり結界内が滅茶苦茶になりそう。

 3、人的被害が無いように弾き飛ばす&その方向の結界解除→謁見の間だけならずその先の城の一部がエライことになりそう。

 4、撃たれる前に撃つ→集束した魔力が暴発、結界内ががが…。


 あ、アカン…詰んでる。


 こ、ここは撃たれる前に結界を解除して魔人を吹き飛ばすべきか…?いや、ソレでもすぐに暴発しそうだな…。

 ど、どどど、どうすれば…。


 そしてその時…『並列思考』の俺が語り掛けてくる。


「受け止めた時に魔力弾を結界で覆えば良いんじゃね?」


 それだっ!!


 方針が決まったところで「さあ、来いっ!」と待ち構える。

 

 ちなみに魔人の最後の攻撃で魔力を高めているのが分かるのか、周りのオッサンたちはビビり散らしていたりする。

 国王は目の前でシーバスが防御体制を取っているからか微動だにせず、こちらを見守っているようだ。


 何か国王のシーバスへの評価がやたら高いような気がするのは気のせいだろうか…。


 そして…


「喰らええぇっ!魔人砲っ!!」


『ズドンッ!!』と一メートルほどの黒紫の塊が魔人の右手から放たれる。『ズゴゴゴゴ…』と触れてもいないのに謁見の間の床を削りながら、一直線に俺に向かってきた。

 俺は両掌に魔力を纏わせ、『ズンッ』と魔力弾を受け止めた。『刻を視る者ニュータイプ』により高まった空間認識能力で魔力弾の周りの空間を把握。即座に結界を発動、魔力弾を覆う。


 ………って、手ええっ!?俺の手が接触してるから、そこだけ結界に覆われていないんですけどぉっ!?と言っても既に後の祭り…。

 ええぃっ、仕方ない…このまま結界内で爆発させるしかない…。…い、嫌過ぎる。


 俺は接触している掌から誘爆するように魔力弾に魔力を送り込む。魔力弾は少し収縮し、次の瞬間…


『ドンッッッ!!』


 結界内で小さく爆発。


 …っ!?………痛あああいっ!?


 数秒か数十秒か…時間が経過し、爆発のエネルギーが収まったのを見計らい、俺は結界を解除した。


「あ~痛かった…」


 俺は両掌をふぅ~ふぅ~と息を吹き掛けながら言う。


「はあ…はあ………ちっ………俺の最大の攻撃が…はあ…痛かったで…済むのかよ…」


 一つ舌打ちをし、ボソリ…と魔人が呆れたように呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る