第205話 VS伯爵級魔人⑤

 結界の外から野次を飛ばしてくる貴族のオッサンどもを一睨みして黙らせたあと…


「『蹴っ飛ばす』とも申してましたが…」


 …うるさいな、良いんだよ細かいことは…。まあ、結界を解除してやろうか、とも思ったけれど…。

 と口に出した瞬間、近衛騎士たちの後ろにススス…と下がるオッサンたち…。

 この国の貴族はそんなんばっかりか?国王のオッサンなんか堂々としてるっていうのに…。


「国王陛下もいらっしゃるので結界の解除は…」


 …分かってるよ、やらないから。

 そう言って、魔人へと視線を向ける。さっきのダメージが少しは回復したのか、まだまだ魔人の闘志は衰えていない。

 なかなか根性あるね…。


 だが…


「ぬあああああっ!!」


 冷静さ、は失ったようだ。

 雄叫びをあげ、攻撃に全振りするかのような魔力の高まり…。今までも特攻に近かったけれど、さらに攻撃に振っちゃう辺り、マジ戦闘狂バーサーカーだな。


「ふぅっ…ふぅっ…」


 息を荒げるほどに魔力を高め最大の一撃…攻撃を当てられない俺に対してのソレは悪手以外の何物でもないだろうに、その判断が出来ないほどに一気に思考が怒りに飲まれた…か。


 ただ…


 俺やシーバス以外がいるこの場に限っていえば、ソレも有効…。自爆に近いレベルで高めた魔力…そしてソレを纏った攻撃は…


 シーバス…国王の前に立って全力で防御しとけ。


「かしこまりました。………他の方々は…」


 …知らん。


「「「おいいいぃぃっ!!?」」」

「「「ちょっと待てえええっ!!?」」」


 うるせえ…黙れ。

 ギロリと睨むとサッと目を逸らすオッサンたち。ふんっ、自分たちで何とかしてください。

 まったく…静かなのは国王と宰相らしきオッサンと騎士団長のオッサンだけだな…。

 …ここにはオッサンしかおらんな。貴族のオッサンたちなんか半分くらい減っても誰も困らないんじゃないか?


「ユーリウス様…間違ってはいませんが言い過ぎです」


 …お前の方が酷いこと言ってない?

 チラリ…と貴族のオッサンたちを見ると、青冷めているかワチャワチャ焦っている姿が目に入る。

 必要るか、こんな奴ら…?と宰相らしきオッサンを見ると、苦笑い。

 微妙な表情するね…。


 そうこうしているうちに魔人の息も整ってきたようだ…。


「はぁ………ふぅ…」


 息とともに怒りも収まった…ワケではなさそうだ。


「我が最大最強の一撃…受けてみろ」


 左手を添えて右手を前に突き出す。魔法陣が描かれたりしていないから、純粋な魔力弾だろう。

 最大まで高められた魔力が魔人の右手に集束されていく…。


 伯爵級とはいえ、その魔力はバカにならない。コレはちょっと…


「本気で防御しないと不味い…かな」

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