第204話 VS伯爵級魔人④
瞬動や縮地などの高速移動術は、点と点を結ぶような『線』の動きである。どんなに速かろうと必ず『通って』いるワケだ。
対して転移は点から点へ『通る』のではなく、『跳躍』が表現として正しいかは知らないがしているワケである。まあ、何が言いたいかと言うと…
高速移動術は『通って』いる以上、その進路上に『置いて』おけば勝手にぶつかってくれるワケだ。何を『置く』かって?もちろん『攻撃』である。
ダメージがちょっと入る程度の魔力弾を魔人の進路上に置くだけの簡単なお仕事である。速度と手数を増やして、俺の防御を上回ろうとする魔人。故に増した速度がそのまま自分へのダメージとして反るワケだ。
とはいっても、そのダメージは蚊に刺された程度のモノではあるが…。
「くっ…ぐっ………ええぃっ、鬱陶しいっ!」
魔人はさらに魔力を放出し、おそらく防御力を高めたのだろう。両腕を十字にして突っ込んでくる。
「おらああぁっ!!」
「『石壁ストーンウォール』」
魔人と俺の間に分厚い石の壁を魔法で出現させる。
「っ!?構うかあっ!」
そのまま突っ込む魔人。清々しいほどに予想通りな動きである。
『ドッ………ガシャアアァッ…』
激しい衝突音とガラスが割れるような破砕音が謁見の間に響く…。
そして魔人から見た、砕けた『石壁ストーンウォール』の向こう側には…
「ふんっ、こんなモノッ……なっ!?」
そこには舞い散る羽のエフェクトだけを残し、俺は既に魔人の横に移動していた。
「だから防御が拙過ぎるって言ってんだろ」
上から下に叩きつける…俺はジャンピングボレーのような形で魔人の後頭部を蹴り下とす。
『ドッ………ズガァッ!』
「ガッ!?………ガハァッ…」
叩きつけられた魔人を中心に謁見の間の床に蜘蛛の巣状の罅が走る。
………床の修理代、俺持ちになるなんてこと…ないよね?…そんなことが頭を過るが、視線は魔人から外さない。
「ぐっ、くっ…この」
ブルブル…と後頭部を押さえながら頭を振り、起き上がる魔人。ダメージはあるようだが、まだまだ平気そうである。…結構強めに蹴ったんだけどな…。
「何をしているっ、早く追撃してトドメを刺さんかっ!」
結界の外…貴族のオッサンの一人からそんな声があがる。そして同調するかのように「そうだ、そうだっ」やら「早くせんかっ」など次々と続くワケだが…
「おい………ちょっと黙ってろ。………蹴っ飛ばすぞ」
オッサンどもにギロリ…と視線を向け、魔力を放出。そう言い放つと、オッサンどもの野次がピタリ…と止まったのは言うまでもない。
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