第203話 VS伯爵級魔人③

「さあ…今度はこちらから行こうかっ!」


 戦闘の勘を取り戻すには本当に丁度良い相手だな…と思いつつ、カウンターの三日月蹴りを放ったところで魔人との距離が少し開き、俺は言い放った。


 しかし結界の外では…


「さあ…今度はこちらから行こうかっ!(キリッ)………似合いませんね」


 シーバスッ!?お前、マジであとでぶっ飛ばすからなっ!

 そして…


「ぷっ…」

「「ぷふっ…」」


 国王と騎士団長たちもつられて吹いていた…。………戦うの止めてやろうかしら。


 しかし「さあ…今度はこちらから行こうかっ!」なんて言ったばかりだしな…。くそぅ…言わなきゃ良かったよ。

 とりあえずシーバスにジト目をプレゼントして、魔人に向き直す。


「くぅ…」


 さっきの三日月蹴りのダメージはまだ回復しきっていないようだ。


「このガキ…本当に何者だ?魔人である俺のガードを越えてダメージだと…?」


 お前ら魔人の言う『ガード』は『防御』じゃないからな…固有能力なだけだから。『防御』さんに謝れ、と言ってやりたいところである。


「お前ら魔人のダメージカットは確かに強力な能力だけどな………だからこそお前らは弱い」


「なんだと…?」


「能力を過信し過ぎて防御も何もせずに突っ込んでくる。ソレは強みでもあるが…」


「弱み…でもある、か…」


 ちっ…と一つ舌打ちをして苦い顔をする魔人。心当たりやら覚え、が有りすぎるのだろう…苦い顔をしながらでも納得しているようである。


 この魔人…全然煽りに乗ってくれんな。

 今言ったのは本当のことではあるが、前に戦ったことのある魔人たちはこれでほとんどの奴が「人間風情が舐めたことをっ!」みたいな感じになってくれていたのに…。

 なかなかにメンタルの強い魔人である。


「なら…」


 ………ん?


「ならガキィッ、テメエが反撃出来ないほどに攻めれば良いわけだなぁっ!!」


 ゴォッ…と黒紫の魔力をさらに強め、全身から吹き出す魔人。

 ………しまった、理性的に煽りに乗らないんじゃなくて、ただの脳筋だった。…まあ、ある意味潔いとも言えなくもないが…。

 コレはコレで…。


 より本気で攻めてくるというのなら、より練習にはうってつけということだ。

 俺はニヤリと口角を上げ…


「良いぜ…本気のお前を見せてみろ…」


 右手を差し出し、クイクイ…と指を動かす。


「はっ…」


 魔人は一つ息を漏らし、こちらも口角を上げニヤリとする。ソレが合図かのように、吹き出す魔力をさらに大きく、激しく放出。


「行くぞっ、らあああぁっ!!」


 やだ、この魔人…脳筋じゃなくて戦闘狂だったわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る