第182話 スイート
行列から外れ、その横を優雅に抜けて行くゼハールト家専用高機動型馬車アサルトバスター。まあ、何処にもアサルトの要素もバスターの要素も無いのだけど…。
王都の大きな城門に到着し、一般人の行列を横目にしながら、俺たちは王都内へと足を踏み入れた。
衛兵には王城に先触れをお願いする。無いとは思うが今日の今日、の登城は勘弁なので王都には五日間滞在する旨を伝えてもらう。
宿は、どうやら国王サイドで取ってくれているようで、衛兵の一人に案内を受けて、指定の宿屋へと馬車を向けた。
宿は貴族区に程近い場所に在り、それは貴族区の次に王城にも近いというこで、王都に屋敷を構えていない貴族たち御用達の宿のようである。
貴族御用達ということもあり、なかなかに立派な作りで、サービスも行き届いている感じである。
今回俺たちは国王に招待された形なので、通された部屋はスイートルーム並みに立派な部屋だった。シーバスと御者さんには同じ宿内で別の部屋が宛がわれていた。
…ということは………滞在期間中はこのスイートルームは俺の好きに出来「そんなに王族は甘くありませんよ」………シーバス、何故自室にいない?
「必要は無いと思いますが、名目上とはいえ私はユーリウス様の護衛ですので…」
…正論である。しかし分かっているぞシーバス…お前、スイートルームに入りたかっただけだろう?
「まあ、否定はしません…」
素直っ!?
そんなことより、ここは大丈夫だ。早く自室に戻りたまえ…。
「護衛ですので…」
うるさい、良いから戻りたまえ。
「ちっ…駄目でしたか」
舌打ちしたっ!?おい、今、舌打ちしただろっ!?
「いえ、何のことかちょっとわかりませんね?」
秒で嘘をつくんじゃないよっ!?…まったく。そんなやり取りをしつつ、渋々とスイートルームを出ていくシーバス。
まあ、シーバスを追い出しておけば、俺に接触しようとする奴なり、見張る奴なりが出てくるかもしれない…ということも狙ってはいるんだけど…。
実際のところ、シーバスもソレは分かっているのでおとなしく引き下がったワケで…。
ただし…舌打ちしたのは許さん。
一息ついていると先触れに出てもらった衛兵さんが城からの返事を持ってくる。
登城…謁見は明後日の午前中とのこと。了解の旨を伝え、衛兵さんは戻っていった。
謁見か…前世の勇者の時以来だな。………う~ん、面倒くさい。ここまで来ておいてなんだが、バックレられないか…と考えてしまう。
そもそも義祖父さんや父さんを呼ぶのならともかく、何故俺なのかが分からない。義祖父さんは何か知ってそうだったけど、何も言わなかったしな…。
とりあえず謁見は明後日だし、明日は準備しつつ王都を散策でもしようか。
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