第173話 必要だよね?

『火球』を『花火』に強引に変えて打ち上げた後…並んでいる人たちからはパチパチと拍手とおぉ~っと感心するような声をいただいた。

 いや、お騒がせしてすみませんでした。全てさっき連行された奴が悪いんです…と言いつつ、ペコリと頭を下げておく。

 とりあえず頭を下げておけば、そこまで怒ったりするような人はいないだろう。現代日本は下げてもアレだが…。


 そして俺たちは再び行列に…と思っていたら、馬車と共に衛兵さんに連行、都市内部の詰所へと連れてこられた。

 早くデュナメス内に入れたよ、やったね!とはならず、事情聴取だと。面倒くさっ!


 しかし、今日明日はデュナメスにいる予定だからな。ここはおとなしく受けておかないとさらに面倒なことになるだろう。

 御者さんだけは宿を取りに行かせてもらえるように隊長さんにお願いしたところOKだったので、俺とシーバスは残り、事情聴取の開始。


 とは言っても、先ほど概ねシーバスが話しているので、あくまでも形式上とのこと。

 いや、面倒くせえんだけど…。…仕方ない。


「えっ?ゼハールト家の五男?」


 えっ?そこ?

 いや、馬車にも家の紋章とかあったでしょ。


「すみません、貴族ということはわかるのですが、どこの家かまでは…伯爵家以上の紋章なら覚えさせられるんですがね…」


 と隊長さんも若干苦笑い。

 そりゃあそうか…大都市になると訪れる貴族も多いからな。全ての家門の紋章までは覚えてなどいられないよな…。


 聴取も調書も終わり、さて解放かな?というところでシーバスが隊長さんに話し掛ける。


「また絡まれた際はどうすれば良いですかね?」


 うむ、シーバス、良い質問だ。しかし、対して隊長さんは渋い顔をする。


「そうですね…あなた方なら自分たちでなんとでもなるのでしょうが…」

「都市内ではソレは困る…と?」


 コクリ…と頷く隊長さん。

 まあ、立場上、どうにかしちゃってください。とは言えないよなあ…。


「まあ、あなた方の身元は確認出来ていますし、何かあったら事後報告で良いのでご連絡ください。デュナメスの領主様はゼハールト家のファンですし…」


 なにソレ、初耳。


 そんなんで良いのか?と話を聞くと、元々は義祖父さんの強さに憧れを持ちつつ、最近というかここ数年はグラム商会からいろいろと仕入れ、ソレがゼハールト家が関与しているのも知っているそうだ。

 隊長さんは領主とは幼なじみで、平民の出ながら今でも仲良くしているようで、その辺の話をいろいろと聞かされるらしい。

 まあ、良い関係なのだろう。


 そして話を聞いている限り、ゼハールト家関与の話をしたのは、家の義祖父さんとグラム商会長の二人…。

 別に悪い奴に話したワケではないが…ケジメって必要だよね?

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