第172話 彩る

 大都市デュナメス…東西南北にある門のうちの一つから城壁内に入ろうと並んでいたのだが、俺の作成したゼハールト家専用高機動型馬車マークIIを狙ってきた失礼なお貴族さまにお仕置きをしていたら、今度はデュナメスの衛兵さんに取り囲まれていた、という面倒な事態が連続して起きていた。


 もう面倒なのでマルチロックオンからのフルバーストしても良いですか?


 …と頭の片隅に過らないでもないが、ここはグッと堪える。おいシーバス、「ソコは過っちゃうんですね…」という顔は止めろ。一応、我慢しているんだから…。


 そんなシーバスの横には白目を剥いて、気を失っているのか、呆けているのか、わからないお貴族さまの姿が…。シーバスこの野郎、後で俺がノーザンライトボムで頭だけ地面に突き刺そうと思っていたのに何てことしやがるっ。

 まあ良い、そんな状態になっているんなら二度とゼハールト家には手を出さないだろう…。それよりも…だ。


「おいおいおいっ!?何だ、あのバカでかい火球は?聞いてないぞっ!?」

「アレをあんな子供がっ!?」

「君っ!早くそんなモノは捨てて、こちらに来なさいっ!」

「お母さんも悲しんでいるぞっ!おとなしく投降しなさいっ!」


 お貴族さまもアレだな…と思っていたら衛兵さんもちょっとアレじゃないか…。何で俺が犯人扱いみたいな感じになっているんですかね…。………解せぬ。

 おいっ、シーバス。言いたいことがあるのなら後で聞こうじゃないか。とりあえず衛兵さんたちを何とかしてくださいこの野郎。


 …と必殺『執事に丸投げ』をお見舞いしておく。シーバスは「やれやれ…」と衛兵の隊長さんらしき人に近付き話を始めた…。

 一応、『火球』は維持しておくか…なるべく早くお話進めてね。………熱いから。


 少しすると衛兵さんの数人はお貴族さまを連行。俺の方には隊長さんと残りの数人がやって来た。


「あぁ………その魔法、何とかならんかね」


 ごもっともで…。


 じゃあ、このまま空に撃ってから散らしますんで…良いですか?


「あ、ああ…頼めるかね」


 了承を得たので空に向けて『火球』を撃ち放つ。


『ドンッ………ドパアアアァァンッ…パラパラパラ…』


 俺は『火球』を攻撃魔法から花火的に散るように魔力を操作。属性をいくつも付与して色も調整してみた。

 即席の花火魔法を空中で爆発させて、昼間でもそれなりに綺麗に空を彩る。

 行列の横とはいえ騒ぎの中心にいたので、並んでいた人たちへのお詫び、ではないけれど…このくらいは良いよな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る