第167話 WIN-WIN
エクシア王国第三位の都市デュナメス…何やら「目標を狙い撃つ」とか言ってそうだが、別に言っていない。
王国で王都を除けば最大の広さを誇るこの大都市は東西南北を…って、この件はもういいか…。
現在、俺たちは馬車に乗り審査待ちの行列に並んでいる。
多くの人々が集まるこの大都市…行列の長さも半端ないってっ!と叫びたくなるところである。
早いとこ宿を取って買い物行脚としゃれこみたいところなのだが、こればかりは仕方ない…とおとなしく車内のベッドでゴロゴロとすることにした。
普通の馬車はベッドなんか装備されていないって?ソレは馬車を改造する努力をしない奴らが悪いのだ。…とチートスキルや『無限収納』内に有った素材のことは棚に置いておくことにする。
まあ、改造馬車の技術はグラム商会に卸したので、そのうち貴族専用の高級馬車でも作って、勝手に大儲けしてくれることだろう。もちろん技術使用料の契約を結んでいるので、売れれば売れただけゼハールト家も潤うからWIN-WINである。
商会長にも貴族にはガッツリ高値で良いよ、と言ってあるし、貴族たちからはしっかり搾取させていただこう。
それでも『空間拡張』は無理だろうなあ…とか世界樹の素材なんて手に入らないよなあ…と思わないでもないが…。
さてゴロゴロするか…と思っていても、そうは簡単にはいかないらしい。
多くの商人たちが集まるだけあって、目敏くこの馬車を見てはいろいろと聞いてくる商人たちが多いこと多いこと…。
シーバスに対応させて、グラム商会に問い合わせを…と言わせているが、次から次へと商人たちがやってくる。
こんなことなら、馬車自体に『偽装』を付与しておけば良かったと、ちょっと後悔している。今からの付与じゃあ逆に怪しいしなあ…。
商人だけならばまだ良かったのだが、もちろんと言うか当然と言うか…、貴族たちの目にもつくらしい。
あまり目立たないようにしたつもりなんだけれど、全然足りてなかったようだ。
少し馬車の外観は弄った方が良いか…。
シーバスはともかく御者さんに貴族の相手は可哀想なので一応俺が相手をするようにする。
ヴァーチェ方面から来ている貴族たちはゼハールト家の話や噂なんかを知っているからか、挨拶をしに来た程度だったんだけれど…。
問題は馬車にデカデカと描いてある紋章を見ても気付かない、ゼハールト家の噂も知らない奴らの対応である。
うむ、非常に面倒くさい。…とは言っても相手をしなくてはならない。
う~~~ん、どうするかなぁ…。
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