第168話 『威圧(偽)』
都市デュナメスへ入るための行列、その待ち時間中に、ゼハールト家専用高機動型馬車フルバーニアン目当ての商人やら貴族やらの相手をしている。
商人の相手はシーバスと御者さんに。貴族の相手は俺がしているのだが…。
「男爵家風情の子弟が調子に乗りおってっ!いいからその馬車を…ひぃっ!?」
「ぁあっ?誰に言ってんだコラッ、相手を見て言葉を選んで喋れよ………ぶっ殺すぞ…」
切れっ切れ………いや、キレッキレである。
『威圧』スキルは持っていないので、魔力と殺気に指向性を持たせて相手にぶつける『威圧(偽)』で追い払う。いや、面倒くせえ…。
ヴァーチェから遠い貴族家なんかは、ゼハールト家との繋がりが薄い…と言うよりほとんど無い。
義祖父さんが裏で動いていた時に繋がりがある貴族家は普通に挨拶程度で済んだのだが、ソレ以外の貴族家はゼハールト家をただの男爵家として見ているからか、やたら高圧的である。
ホント腐ってんなぁ…。
「我が伯爵家の力を持ってすれば、君の家などどうとで…ひぃっ!?」
「どうにかされる前に…テメェが今っ、ここでっ、先に死んでみるかっ?………ぁあっ!?」
こんなんばっかりである…。
それでもいくらか相手をしていればソレも収まり…、だがげんなりした俺は外の空気を吸うべく馬車の外へと出る。
「すぅ~…はぁ~…。うん、空気がうま…くねえな…」
どこの貴族かは知らんが追い払った貴族が私兵を連れて、俺を取り囲んでいた。
一応建前上、護衛のはずのシーバスはというと、いかにも「憂さ晴らし…したいでしょう?」と言わんばかりの顔をしている。
よく分かってるじゃないか。
「先ほどはよくもやってくれたな」
いや、お前が勝手に『威圧(偽)』にビビって逃げただけだろうが…。
「我が力を思いしるが良い」
我が力?私兵をいっぱい連れてきて?
「やれっ!」
貴族の号令で私兵たちが一歩前に出る。
いや…
一歩しか…
それ以上前に…
行くことが出来なかった…。
何故なら…
『ゴオォォォ…』と魔力を噴き上げ…
ソレが自分たちの肌が、顔が、風を感じるほどに…
その殺気が…
全身に刺さるような感じを受ける。
その中心にいるのはただの少年…。
装備も着けていない、貴族服こそ着ているものの、まだ成人してもいないであろう、ただの少年…。
私兵たちから見れば、ただの子供に…子供を相手に…
何故か身体を動かすことが出来ない…。
その子供が私兵たちを一瞥する…。
その視線は冷淡で…
その表情は口角を上げ、極上に邪悪な笑みを放っていた…。
「「やってくれたな…」はこちらの台詞だ…長い行列をゴロゴロ過ごそうと思っていたのを邪魔してくれやがって…。ぼてくり回すぞっ、コラアァァァッ!!」
あとなんだ?『極上に邪悪な笑み』って。俺は大悪魔か大魔王かっ!?
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