第166話 別に聞こえないけど?
ゼハールト家専用高機動型馬車に乗り、王城…王都へと向かう。
ヴァーチェに来てからは他の都市、街に行ったことが無いので、現在向かっている理由を除けば若干楽しみだったりもする。
途中、いくつかの村や町と都市を一つ経由して王都エクシアへと向かっているのだが、立ち寄ったところにお金を落としていくのは貴族の義務である、ということから移動時間を割いてでも村や町に寄らなくてはならない。
せっかくの高機動型馬車もコレではあまり意味を成さなそうではあるが…違う。
馬車が速くなったことで到着が早まり、その分休めるのだ。
御者さんによると三割ほど速いらしく、馬の疲労も軽減されていると喜んでくれた。
しかし三割か…。さすがに某赤い人の専用機のように三倍とはいかなかったか…。
王城には「何時くらいに着きますよ」と先触れを出し、その期間内に向かうワケだが、現在予定通り進行中である。
早めに着いて早めに休む、を繰り返し、気持ちも体力も余裕を持って動いている。
村や町では、ほとんど宿泊するだけで終わっているが、一緒に着いてきているシーバスにお土産類を頼んであるので、色々と買ってきてくれている。
そして…
エクシア王国人口第一位の都市ヴァーチェと第二位の都市王都エクシアのちょうど中間に位置する大きな街…人口第三位の都市デュナメスに俺たちは到着する。
都市デュナメス…。
どこかから「狙い撃つぜぇっ!」とか聞こえてきそうだが、別にそんな声は聞こえない。
この都市はヴァーチェと王都を結ぶだけでなく、ヴァーチェ以外にも大きな二つの都市とも王都との中間に位置していた。
つまり…人口こそ第三位に甘んじているものの、三つの都市と王都を繋ぐ…エクシア王国最大の都市である。
「でっけえ城壁だな…」
「王都を守る壁…としての役割も、この大都市デュナメスにはありますからね…」
「へえ…」
一体『何』を想定して作ったのやら。って感じだけど…
「王国最大の交流都市でもあるので、いろいろな物が集まっていると思いますよ」
シーバスの言葉に、俺はキランと目を輝かせ…
「…買い物だな」
この都市は東西南北を王都とヴァーチェを含む四つの都市に囲まれている。故に人が集まり、物が集まり、だからこそ最大の都市…という位置付けなのだ。
今でこそ発展著しいヴァーチェに人口という面で差を付けられたものの、東西南北の商人と旅人が集まるこのデュナメスの賑わいはヴァーチェ以上である。
「さて…サクサクと買い物に向かいたいところだけど…」
「まずは…この長い審査待ちですね」
「だな…」
こういう時に貴族特権とか使えねえかな…と思いつつ、ゼハールト家専用高機動型馬車は審査待ちの列に並ぶ…。
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