第165話 ◯◯魔石◯◯◯◯

 タイヤは世界樹をホイール型に加工して使用。軸受けには鉄製のベアリングを錬金術で作成してみた。

 このベアリングはテレビ番組で見たことはあったが「こんな感じ、だったっけ?」程度しか覚えていなかったので、やはり鑑定先生の記憶からの引き出し機能が輝く。さすが鑑定先生、さすかん。

 もちろんシャフトも鉄製である。ホイールを世界樹にしたのは木製の方が見た目でバレ難いでしょ?まあ、バレても構わないし、なんなら新技術としてどこかの商会や工房に売っても構わないとは思っている。


 そしてスライム素材を使用したタイヤである。

 元が既にゴムのような物なので、錬金術で分解、合成して数をまとめてからタイヤの型に加工する。加工時、タイヤの溝のパターンなんていうのは、やはり俺は細かいところまでは覚えていないので鑑定先生にお任せである。

 雨の日も止まり易いようにしてね。


 出来上がったスライムタイヤは原付程度の太さの物にしてある。成型前に脱色、着色してわざと木製のような色にしておいた。クッション性能を損なわないように硬化材は使っていない。

 そしてホイールに被せて完成である。

 世界樹のホイールにはホイール自身とベアリング、シャフトへの硬化と劣化耐性を付与してある。タイヤにはクッション性能を損なわないように劣化耐性の効果のみにしてある。

 この複数付与も世界樹の素材により魔石を使わず可能だった。…ホント、何故エアコンの時に…。


 馬車全体としては重量軽減の効果を付与し、馬への負担を減らしつつ、防水の効果を付けたり、耐衝撃、耐魔力なども付与。防音も付けようかとも思ったが、外の様子が分からなくなるのもアレかな、と思い付けなかった。


 窓ガラスはマジックミラーのようにしてみた。

 馬車の中からは見えて、外からは見えない仕様…謎の光がお仕事するような感じになっている。…何だ謎の光って…。

 防御力はその辺の鎧や盾よりもはるかに高いのはお察しである。矢でも魔法でも撃ってこい、という感じに仕上げてある。


 このような感じでゼハールト家専用馬車は完成した。全体的に黒を基調とした色合いに屋根と出入りの扉にはゼハールト家の紋章が描かれている。

 ちなみに世界樹の素材が無ければ、各所に筋彫りして魔石を流し込み、某サイコなんちゃらのようにしないとこの性能は出せなかったと思われる。

 多分、無ければやっていたので、フル魔石フレームの開発がコレにより遅れたことを報告しておこう。

 …何だ、フル魔石フレームって…。


 そして俺は、この高性能なゼハールト家専用馬車に乗り、嫌々王城へと向かって行く…。

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