第164話 揺られて…
国王からの召還状…何だか理由もわからないのに王城に呼び出された俺は当然抵抗した。
しかし…
「ユーリ…ちゃんと行かないと駄目だよ」
「ユーリ兄…行かないと嫌いになっちゃうよ」
「ゴフッ…」
セイ兄とレイナの攻撃により血反吐を吐き(吐いてはいないが…)精神的ダメージを負った俺は、呆然としている間に着替えさせられ、王城へと向かう馬車に乗せられていた。
意識を取り戻した(別に失ってない)俺は諦めて馬車に揺られている。
と言ってもこの馬車…最高の乗り心地を求め、俺が造った物である。
今までゴムに代わる物が見つからなかったのでゴムタイヤは諦めていたのだが、エアコン作りの際の情報集めで知ったスライムの特性をタイヤへと生かしたのだ。
馬車本体やサスペンションなどは構想だけは済ませていたので、エアコン作りの時に比べれば非常にスムーズに造れた、と言っておこう。
本体は樹齢一万年を越えたと云われている古木を使用。俺の『無限収納』に入っていた物だが鑑定したら世界樹の一部だった。
世界樹なんて持ってたっけ?と思ったが、多分前世でエルフの里に行った時とかに貰っていたのだろう。
ただでさえ硬いのに、その表面にはアダマンタイトを粉末状にして混ぜた硬化材を塗布。これで生半可な攻撃は通さない。
車内は『空間魔法』による『空間拡張』を付与エンチャント。
本来なら『魔法吸収』を組み合わせた魔石なんかと一緒にするのだが世界樹を材料にしたコレは世界樹から切り離されても魔力を生み出していたので魔石要らずだった。
まあ、あまり車内を広くし過ぎてもアレだし…と、そこは自重して八畳くらいに抑えてある。見た目は六人掛け程度の馬車なんだけれどね。
しかし…この世界樹の材料に気付いていれば、エアコン作りはもっと楽だったのでは…と思わないでもないんだが…。
内装はそんなに凝ってはいない。
一人用のシャワールームにミニキッチン、簡易ベッドが二つにローテーブルと一人用ソファーが二脚と四人用ソファーが一脚…ってところだ。
八畳間くらいだとギリギリだな。
えっ?どこが凝っていないだって?いやいや、一人暮らしのワンルームマンションみたいな感じになってるでしょ?ベッドは二つあるからいっぱいいっぱいだし…。エアコンは取り付けたけれど冷蔵庫は無いよ?
ソコじゃないって?細けえこたあいいんだよ。
そしてサスペンション。
俺はまったくと言っていいほど覚えていなかったのだが、どこかでその構造を見ていたのだろう…鑑定先生が俺の記憶からバッチリ抜き出してきてくれたので、錬金術で余裕でした。
この世界ではまだ鉄製のバネも無いのに、この馬車にはミスリル製のバネを使ったサスペンションが使われているのだから贅沢である。
魔法を使用したクッション性能はもちろん、強度も高い…最高の部品である。
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