第140話 持っていなかったな…

アイアリーゼさんに紅茶のお代わりと追加のケーキ…普通のショートケーキだが気に入ってくれたようだ…を出し、自分の分の紅茶を淹れて啜る。


「ズズズ………ふぅ『コトン』………で何のよう?」


「長えよっ、ここまでがっ!?何で呼び出しを無視したお前を俺たちが起こしに来てお前の求婚を見せられて、応接室に通されたらケーキを出されて紅茶を淹れ始めてまたお前の求婚を見せられてっ、俺はティーバッグの紅茶一杯とか…うがあああっ!!」


何かアラド君がちょっと壊れたんだが…。


しかし、ふむふむ、なるほど…。


「そうか………いや、照れるな」


「ちょっと照れるわね」

「ソコじゃねえええええっ!!?」


アラド君は立ち上がり、その姿は天井…というより天に向かって叫んでいるようだった。…叫んだ言葉はただのツッコミだったが…。


そうか、違ったか…すまんな。


「ギルマスもいつまでもノらないでくださいよっ!いつまでボケ倒す気ですか?ツッコミが追い付かないし、俺はそんなキャラじゃないでしょう…」


ツッコミ疲れなのか、肩で息をするアラド君。ツッコミじゃない?結構合ってると思うよ?


「結構似合ってると思うわよ?ツッコミ…」


ウフフ…と微笑みを浮かべるアイアリーゼさん。どうやら思考がシンクロしてしまったようだ。これはもう結婚するしか…


「シンクロなんかしてねえからな」


…っ!?思考を読まれた…だとっ!?


「おい…もうツッコマねえぞ…」


そうか…つまらない男だなアラド君。


「つまんねえって言うなっ!?あと君呼び止めろぉっ!」

「ウフフ…ツッコンでるわよ?」


「え?…あっ………ぐぬぬ…」


ふっ、青いなアラド君。俺は精神の年齢だけなら、もう還暦を越えた男。大分身体に引っ張られてはいるが…。二十歳前後の野郎など、俺から見たら子供にしか見えないのだよ。

とは言っても話が進まないのも事実。


「そろそろ本題に入ってもらいましょうか…」


キリッ…とした表情で俺は言う。


「ウフフ…そうね、そろそろ本題に入らないとね」

「………もう嫌だ、この二人…」


さすがにこれ以上アラド君を弄るのも面倒なので、このままちゃんとした話をしようか…。


「………で、呼び出しは無視しましたけど、何でわざわざ家まで?しかもギルドマスターまで連れて…」


俺の問いに…


アイアリーゼさんの瞳が妖しく光る。


そういえば…


俺は魅了耐性だけ持っていなかったな…。


い、いかんっ!まさか…


ヤられるっ!?

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