第139話 おかしくないけど…
俺は日本人の頃に見た良さげな白いポットと白いカップを魔法で造る。コレにはお湯を入れて予め温めておく。
温めたポットにティースプーンで大きな茶葉を大匙一杯入れる。
別のポットで沸騰させたお湯を注ぎ、蓋をして三分ちょっと蒸らす。タイミングは料理スキルに譲渡。
今だっ!…とスプーンでポットを一かきして、茶漉しで濾しながらカップに注ぐ。
香り立つ完璧な淹れ方だった…気がする。まあ、良いんじゃあないだろうか。
「アイアリーゼさん、どうぞ。お茶請けにはこちら…紅茶の香るケーキをどうぞ」
スッ…とアイアリーゼさんの前に置く。
「あら、良い香り…ケーキも美味しそうね」
…とアイアリーゼもニッコリだ。
紅茶のケーキは、義祖父さんが買ってきた茶葉が香りは強いが苦味も強くて微妙に飲み難かったので、ケーキの香り付けに使ったところ良いのが出来た。
先日出来たばかりの試作品でもあるので現在はゼハールト家でエルディアが新たに作るか俺の『無限収納』内にしか入っていないのだ。
「おい…」
「ケーキは甘さ控え目に作ってはいますが、紅茶は一先ず砂糖無しで試してみてください」
「じゃあ遠慮なくいただくわね」
フォークで切り分けたケーキを、その小さな口でパクリと食べる。
「………紅茶が香って不思議な感じね。そして甘過ぎず、しつこくない。でも紅茶で流すことでサッパリして、次の一口がまた美味しい。紅茶そのものも香りがとても良いわ。なのにケーキの香りを邪魔しない。苦味も程よく、飲み難いなんてことはまるでない…素晴らしい紅茶ね」
「お気に召したようで何よりです。こちらはどちらもまだ市販されていない試作品で今のところ家でしか食べれません。お帰りの際に少し包みましょう」
「あら?いただけるの?それは嬉しいわ」
「おい…」
「喜んでいただければ何よりです」
アイアリーゼさんは笑顔を浮かべて少しずつ食べ進めていく。紅茶は…おっと、もう無くなるかな。お代わりの準「おいっ!」何だよ、うるさいなアラド君」
「さっきから声を掛けているだろうっ!?あと、うるさいなアラド君、じゃねえっ!目上だっ、俺はっ!」
「目上かどうかは俺が決めることだ。…で何かねアラド君?俺は紅茶のお代わりの準備をしなくてはいけないのだが?」
「あら?ウフフ…ではお言葉に甘えていただこうかしら?」
「いただこうかしら?じゃねえっ、ギルマスっ!甘え過ぎだっ!」
「別に良いじゃないかアラド君。あとうるさいアラド君。で何のようだねアラド君」
「いやいや、
何だ、そんなことを気にしていたのか…。
「いや、全然おかしくないけど」
俺は思いっきり真顔で返してやった。
アラド君は「おぅ…」とか言いながらorzのような形で四つん這いになっていたが、特に気にしなくても良いだろう。
俺は改めて、アイアリーゼさんの紅茶のお代わりを淹れる準備を始めた。
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