第131話 ゴブリン迷宮 二階層ボス部屋前

「なるほど…つまり装備云々で浮かれて、すっかり忘れていた…と」


「「「はい…」」」

「「ごめんなさい…」」


迷宮ダンジョン突入前に冒険者の講師が言っていた通りだな…。下見やなんやで、その他の準備が出来ていない。まあ、初冒険で初迷宮じゃあソレも致し方なし…か?


「あの…」


「ん?」


「ユーリウス君はその…準備してるの?」

「おっ?そうだよ、ユーリウスは装備すらしていないじゃん…」


ふむ…そういうことか。それはまあスキルを公開していない俺が悪いのかもしれないが…


「ちゃんとあるぞ」


そう言い、俺は何も無い空間に手を突っ込む。


「「「なっ!?」」」

「ま…まさかっ!?」

「『アイテムボックス』…?」


実際は『無限収納インベントリ』という『アイテムボックス』の上位互換のスキルなのだが、特に訂正はしなくても良いだろう。


俺が空間から手を抜くと、その手には三本の瓶…色違いの液体が入っている…が握られていた。


「『回復薬』に『上位回復薬』、こっちが『魔力回復薬』………ちゃんと用意してるぞ?装備はアレだ…ほらっ、俺が強過ぎていらないからっ!」


「くっ…確かに…」

「その通りなんだよなぁ…」

「言い返せん…」

「でも…」

「『アイテムボックス』持ちとは思わなかったわ」


「言ったら言ったで頼るだろ?今日だけなら良いかもしれないけど、いない時とか荷物どうするんだ?って話になる。そんなんじゃ、こうやって授業の一環で来てる意味が無いからな」


俺は自分のスキルだからもちろん使うけど。


「まあユーリウスの言う通り…だな」

「「そうだな…」」

「「そうね…」」


「今日のところは俺が出すけど………使った分はちゃんと請求するから、今日はしっかり稼げよ」


「「「それは………やべえな…」」」

「私たち…」

「魔力残量を気にしないと…」


「「「『上位回復薬』とか使ったら…」」」

「「『魔力回復薬』とか使ったら…」」


「「「ヤバいっ!!!」」」


うんうん、良い緊張感が出たんじゃなかろうか。気を引き締めて、ボス戦に臨んでほしいと思います。


一階層のボス戦はもう一つのパーティーが先だったので、今回は俺たちが先にボス部屋に入ることになる。

今は俺たちの前の組、その二つ目のパーティーがボス部屋に入るところなので、出番はもう少しあとだ。

俺はみんなに声を掛ける。


「回復できたか?アレだ、『体力回復薬』いる?」


「いらないっ!いらないよっ!」

「いくらするんだよ『体力回復薬』…」


「そうか…残念だ。あっ…『攻撃力上昇薬』とか『魔力上昇薬』とかバフが掛かる魔法薬とかもあるぞ」


「いらないっ、いらないからっ!」

「魔法薬って………ポーションより高くなかったっけ?」


そんなこんなしているうちに俺たちの番が回ってくる…。

さあ、二階層ボス戦………行こうかっ!

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