第125話 ダンジョン突入前

…と言うワケで迷宮である。


初級迷宮とはいえ、潜るのは中学一年生たちばかりである。冒険者の講師が十数人付いての課外活動ではあるが、身体も思考も幼い子供たちを見るのは大変な労力だと思う。

俺なら絶対に断る案件である。


休む気満々だった俺は、これでもかっ!と言うくらいにやる気はないのだが、周りのみんなは初めての迷宮ということもあり、やる気に満ち溢れている。

これが若さか…。


サングラスを掛けた某大尉を思い出しつつ、そんな台詞が頭を過る。


とりあえず、ではあるが今ここにいる学生は冒険者ギルドに仮登録を先日のうちに済ませている。

通常登録ならばF級から始まるのだが、仮登録である現在はG級という位置付けである。


また本登録は十五歳からになるがその際、中学時代の成績によりF級より上からのスタート、という特典が冒険科にはあったりする。

あくまでも『成績により』ではあるが…。


ちなみにこの迷宮、ゴブリン迷宮とも呼ばれており、初級冒険者が初冒険に、そしてゴブリンリーダーを狩ると初級冒険者卒業、と順を追えたりする。

但し、最下層ボス部屋にはゴブリンキングとゴブリンジェネラルがポップされC級冒険者の登竜門的な側面も持っていたりするので、うっかりボス部屋に入らないように注意が必要でもあったりする。


まあ、俺は単独行動ソロでも余裕なのだが…。


「よぉーし、じゃあ六人組のパーティー作れぇっ」


あくまでも課外活動、授業の一環だ。当然そうなるわなぁ…。

そうなると…


「よぉーし…恨みっこ無しだからな…」

「もちろんっ!」

「「………じゃんけんポンっ!!」」


「よっしゃあっ!!」

「うわぁっ、負けたぁっ!?」


…と、そこかしこでウチのクラスメイトたちによる、じゃんけんが行われていた。

どうやら俺と同じパーティーになるための勝ち抜き戦らしい…。


よく見ると『盾役』『前衛』『斥候or弓兵』『回復役』『魔術師』とそれぞれ役割ごとにじゃんけんをしていた。


なるほど…俺は『中衛』確定なワケね。………じゃなくて…


「良いのか、アレ…?」


…とじゃんけんに参加していないクラスメイトに聞く。もちろん参加していないのは俺以外の中衛の奴らだ…。


「アハハ…本来なら勘弁してもらいたいけど…」

「お前との力の差は歴然だからな…」


「それにお前とは同じ役割だから、こういう実戦以外ではいろいろ教えてもらっているしな」

「そうそう。ま、可能なら同じパーティーになって、ユーリウス君の立ち回りとか見てみたいけどね」


「お前ら…」


なんてことを言うクラスメイトたち。どうやら俺はクラスメイトに恵まれていたらしい。

ちょっと心が暖かくなったよ………今日、無理矢理連れてこられてなければなぁっ…。


あとこの世界にもじゃんけんて存在してたのね…。ちょっとびっくりしたわ。

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