第121話 コレは良いよね?

幸いというかなんというかグラム商会の知り合いには会わなかった。正解には『マップ』を駆使して接触を避けた、が正しいのだが…。


未だ商会長の座に治まっているジジイは、この本店の商会長室にいる。息子が三人いるが長男は営業部長としてエクシア王国内を飛び回っており、次男は首都にある支店の店長。三男がこの本店の店長である。

見事な一族経営である。


ちなみに俺のせい、というか俺の影響でグラム商会の店員は亜人獣人問わず雇い入れ、元々スラム街にいた孤児たちも積極的に雇っていたりする。

なので各フロアにいろんな人種がいるワケで。当然、差別的な人間も訪れるのだから衝突が起こるのだが、都度、商会長の息の掛かった…いや、むしろ商会長本人が出張り、ソレを諌め…いや、もうアレは暴れて…だな。場を収めていた。


当然、そんな差別的な人間は出禁となり従業員に周知されるが、それ以前に商会長にボコボコにされているのだ…普通に訪れなくなったのは言うまでもない。


グラム総合百貨店本店…亜人獣人に、平民に貧民に、広く門を開けている、庶民の味方であり、差別的な人間にとってはソコは魔窟に見えている…のかもしれない。


そして、そんな魔窟から脱出…いや、下見を終えて俺は今、百貨店近くのカフェへと足を運ばされていた。………いや、帰りたいんですけど…。


ちなみにこのカフェ…。俺プロデュース、グラム商会スポンサーで比較的最近にリニューアルオープンしたお店だったりする。

本店での打ち合わせ後に最初に入った時にカフェの看板娘さんが可愛かったので「メイド服…似合うんじゃね?」の俺の一言で決まってしまったという、わりとしょうもない理由なのだが…リニューアルオープン後はなかなか盛況のようで。

今はヴァーチェのカフェでも上位の人気店と言ってもおかしくないお店だろう。


何故人気が出たのか?

看板娘さんが可愛かったのは偶々ではあるが、やはり発端となったメイド服が人気の原因である。

貴族が存在するこの異世界でメイドさんは当たり前の存在ではあるが、一般庶民には当たり前ではないのである。

そんな可愛いメイドさんがいるお店…行かないという選択肢が有るだろうか?いや無い…多分、知らんけど。

つまるところ、現代日本のメイドカフェと経営コンセプト的には大して変わらないのだ。…いや、知らんけど。

そんなワケで、この人気店…あっという間に人手を増員し、いまや立派なメイドカフェに…。

うん、俺のせいだけど…コレは良いよね?

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