第109話 ユーリウスVSエリウス⑤

残念長兄エリウスの最大最強の技とやらを『パシッ』と真剣白羽取りした俺は…


「えい!」

『パキィン…』


手のひらで挟んだままの義兄の剣を、軽い感じでへし折った。


「っ!?バカな…素手で…」

「剣を折ったっ!?」


ヨロヨロと驚いた表情のままで下がりながらたたらを踏む義兄エリウス。

息も荒く、顔色も悪くなってきている。恐らく魔力を使いきった影響だろう。


「くっ………だ、だが、私はまだ…」


何か言おうとしているが、もういいだろ?

『シュッ』とエリウスに『縮地』の下位に当たる『瞬動』で俺は迫る。


「うっ?………くっ…」


反応は出来たようだけど…


「遅い、し…がら空き、だっ!」

『ズンッ』


エリウスの右脇腹に俺の左拳が突き刺さる。


「グハァッ…」


身体をくの字に曲げ、前のめりに倒れ…させねえよ?


左ボディを撃った俺は、左拳を引きながら入れ違いに右拳を振る。


「ふっ!」

『バキィッ』


殴られ吹き飛ぶエリウス。


『バンッ』

「ぐはっ!?」


「お、お兄様っ!?」


壁に叩きつけられ、息を吐き出し、意識が飛んだのか、ズルリ…とその場に背中を預けながら腰から落ちた。


今回は壁にめり込まないようにパンチを撃ったけど、上手く調整出来たようだ。

壁にも罅が入っていない、完璧な調整具合だ。


そして俺の完全勝利!だな。


「お兄様っ!」


エリウスに駆け寄るのは長女アイラ。

家の家族は…行かねえな。いや、マイア義母さんはレイナを抱えてないで息子のトコに行きなさいよ。


「お兄様っ!…しっかり!」


いや、気絶させたのは俺だけど、魔力も枯渇してるんだから休ませてやろうよ?ガクガク揺さぶったらアカンて…。ほらぁ…何か白目剥いちゃってんじゃん?


揺さぶっても起きないことを確認したのか、義姉アイラは俺に視線を向ける。


「よくも…よくもお兄様をっ!」


何なの?俺を悪者にするのはデフォなのっ?

アイラはどこに持っていたのか、杖を取り出す。…魔法杖か。


「次は私が相手よっ!お兄様のかたき…」


いや、殺してねえし、死んでねえよ?


「アイラ…」

「お爺様…」


唐突に間に入る義祖父さんが義姉を呼ぶ。


「止めておけ…ユーリウスは老若男女問わず、殺ると言ったら殺るぞ?」


言い方ぁっ!?

あと字違くない?『る』になってない?気のせい?


義祖父さんに言われた義姉は義祖父さんに移した視線を「嘘でしょ?本当に?」と言いたげな目で、俺に戻す。

俺は…


『ニッコリ』


笑顔で返した。


「ひっ!?」


そしてビビられた。………解せぬ。

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