第107話 ユーリウスVSエリウス③
「『閃紅斬』っ!!」
非っ常ぉ~に残念な義兄エリウスが『閃紅斬』紅い魔力を纏った剣を大上段から振るう。
『ブンッ』
『サッ』
まあ、どんな気合いを入れようが、技名を叫ぼうが、俺は軽く避けるんだけど。
「………………」
「………………」
避けた俺と全力の振り下ろしを避けられたエリウスと目線がバチッと合う。…合ってしまった。
だってしょうがないじゃないか。大きく踏み込み、地に着くほどの振り下ろしだ。上体は前のめりになっているから頭は下がっている。
俺は正面から振り下ろされた剣を横にサッと避けただけで、思ったより近くに義兄の顔があったのだから、そりゃ目ぐらい合うさ。
数瞬、
これはアレだ。恥ずかしさと怒りの両方だろうな…。
「………ぁぁぁあああっ!!」
次に雄叫びをあげながら、刃を返し横に薙ぐ。
『ブンッ』
『サッ』
今度はバックステップして避わす。
「………………」
「………………」
「よ………避けるなあぁっ!」
数瞬の沈黙を挟み、そんなことを宣う残念義兄エリウス。避けるな、とか無茶を言うな。避けるに決まってんだろっ!
まあ、そもそものレベル差もあるし、今年十歳になる俺は能力制限の解放値が六割を越えてきている。正直、当たってもなんてことはないだろうが…。
『ブンッ』
『サッ』
『ブンッ』
『サッ』
『ブンッブンッブンッ』
『サッサッサッ』
「ハア…ハア…ハア…」
「………………」
さらに数合、俺は全て避わす。
余裕な俺に対してエリウスは肩を上下させ呼吸も荒れている。
「ハア…ハア…あ、当たらない?ハア…クソッ!」
「………………」
パワー、スピードだけじゃなく、持久力も何もかも足りてないんだよなぁ。
それに…と俺は鑑定を起動させてエリウスを見る。
ああ、やっぱり。
どんな配分で魔力を込めているのか知らんけど、もうすぐ魔力が枯渇しそうだ。
魔力量も足りていないし、配分する魔力操作も甘い。魔力操作はスキルが無いってこともあるかもしれないが…それにしても雑だ。
う~~~ん…騎士。…見習いとはいえ、こんなに弱いものだろうか?前世と比べてもあまり意味は無いが、それにしても弱過ぎる。
「ハア…ハア…ふぅ…」
おっ、少し落ち着いたか?
「次の一撃に全てを込めるっ!」
………えっ?
「うおおおぉぉぉっ!!」
バリバリバリッ…と剣に残りの魔力を注いでいく。剣は紅い光を放出、先ほどよりも魔力の刀身が伸び、剣の回りで魔力が暴れているようだ。
というか何っ?その勇者みたいな台詞?何か俺が悪者みたいなんですけどっ!?
エリウスは左足を前に踏み出し前傾姿勢。剣は自身の右後ろに少し下げ気味に構える。
「ハア…ハア…喰らうがいい、我が義弟を騙る『使徒』の偽物よ…我が最大最強の技をっ!!」
なんか知らないうちに、いろいろ偽物扱いになっちゃんてるんですけどぉっ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます