第103話 我慢するべきだろうか?
「あいつは…」
「セイリウスの小さい頃に似ているわね…」
二人が義祖父さんと一緒に入ってきた俺に気付き、そんなことを呟いていた。
「なるほど…レイラ第三夫人の次男か…」
「何故、お爺様と一緒に…?」
そう義祖父さんに質問している分には態度は変えてないが…俺は見逃さなかった。二人が一瞬、俺を見たときの目は、ゼハールト家本邸に来た初日に受けた冷たい光を宿した瞳だ。
エントランスホールを見渡すと義兄義姉さんたちはセイ兄を自分たちの後ろに、義母さんたちもレイナとレイラ母さんの盾になるように立っている。
シーバスとセバスさんは迂闊に動けない…そりゃそうか。
メイさんを含むメイドさんや使用人たちはエントランスホールの隅の方で固まっている。特に亜人獣人の使用人たちは怯えているし、震えている者までいる。
「それは一緒にグラ」「お前には聞いていない。黙っていろ庶子」
答えようとした俺の発言は被せられて消された。
そう言われるちゃうとなぁ…確かに俺には聞かれていないんだけれど…。
ふと家族の方を見ると何やら焦っているのか、ハラハラしているのか、そんな風に見える。
…何だ?
と思っていると義祖父さんが、そっと耳打ちしてきた。
「お前がキレないか心配しているんじゃよ…」
…心外だな。そんな簡単にキレたりしないよ?
それが表情に出ていたのか「ええぇ…」という顔をする義祖父さん。…解せぬ。
「お爺様…何故そのような庶子と外出など…?」
そのようなとは失礼だな。
「今日はユーリウスをアドバイザーとした事業計画の打ち合わせでな。一緒にグラム商会に出向いていたんじゃよ」
正確には勝手に着いてきた、が正しいんだけれど、そこはツッコマないでおこう。
義祖父さんが答えると二人はピクリ…と動かす。
「アドバイザー?」
「その子が?」
一瞬、俺に視線を向けるも、すぐに義祖父さんに移す二人。
「その顔はどうやらまったく信じていないようじゃな…」
ふぅ…とため息を一つ吐く義祖父さん。
「当たり前です。庶子の…しかも子供に何が出来ると言うのですっ!」
「お爺様…冗談もほどほどにしてくださいませ。過ぎると面白くありませんわよ?」
お、おおぅ…俺のことと併せて義祖父さんも口撃するか。
「エリウス、アイラ…最近の、ここ数年のゼハールト家の状況は分かっておるだろう?」
「ええっ、もちろん存じてますわっ!」
「グラム商会との事業の成功、それに伴う雇用増加など…。その功績を持って陞爵したこと、などですね」
「そうじゃ、そして…陞爵こそアリウスが受けているが、その功績は全てこのユーリウスが関わり始めたことじゃよ」
「「………なっ!?」」
驚きの声をあげ、目を見開いてこちらを見る。…どうしよう。思いっきりドヤ顔したいんだが、我慢するべきだろうか…?
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