第102話 長兄と長女!
『シーバスッ!これはどういうことだっ!?どうしてこうなっているっ!?』
『お母様…どういうことかしら?私たちがいない間に何があったのか………教えてくれる?』
俺と義祖父さんがグラム商会からゼハールト家本邸に帰宅。本邸の門を潜り、玄関の側に近付いた辺りで怒鳴り声が邸内から聞こえてきた。
「………なあ、義祖父さん?似たような台詞を聞いたことがあるんだが…具体的には俺が三歳ぐらいの頃に…」
「………そうだな、ユーリウス。儂も言ったような覚えがあるわ…具体的にはお前が三歳ぐらいの頃に…。あと、この声にも聞き覚えがあるわ…」
「………………」
なんとなく人物が予想は出来る。シーバスって言っているし、母さんって言っちゃってるし…。
…で、今のゼハールト家にこんな台詞を言いそうな人物は俺が知る限りではいない。つまり…俺が知らない、まだ会ったことのない人物…。
…となると、二人しかいないワケで…。
「…あぁ、なあ………ユーリウス。とりあえず、即ワンパンは待ってくれるか?」
「え?ヤだけど?」
即答である。
「…だよなぁ。いや、まあ、その…なんだ。アレが"ああ"なっているのは儂らのせいでもあるから…」
そんなことは分かってる。
当時のゼハールト家は義祖父さんも義母さんたちも、使用人たちに至るまで色々と酷かった。
あれから六年近くが経って、今のゼハールト家になっているのだ。
その間、一度も会っていないその人たちは、当時のゼハールト家そのままに時を過ごし、育ってきてしまっている。
そんなのワンパン入れないとダメじゃね?
玄関前で困り顔の義祖父さんと、さてどうすっかな…と思案する俺。
しかし…
『平民を、獣人をこんなに雇って…どうなっているのですっ!?』
『シーバス、どうしてこうなっているか…納得のいく説明があるのだろうなっ!?』
さっきと似たようなことを怒鳴り散らす二人の人物…。
「「はぁ…」」
二人で嘆息しながら顔を見合わせてから、ガチャリと玄関のドアを開け、エントランスホールへと入る。
この九年強で俺の見たことのない人物たち…と言ってもやはりと言うか当たり前というか…。父さんと義母さんに似た容貌の二人がそこにはいた。
「「お爺様っ!!」」
「エリウス、アイラ…」
エリウス=フォン=ゼハールト、アイラ=フォン=ゼハールト………ゼハールト家の嫡男である長兄と長女。
その嫡男と長女という立場から、甘やかされ、ゼハールト家の悪い時代…人族至上主義、貴族至上主義の純粋培養された…
つまり…俺の敵だな…。
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