第62話 今じゃない…

元日本人の俺から見たら、この世界は…いや勇者の時の前の世界もか…まだ火薬が無い頃の中世ヨーロッパに似た文明というか街並みをしている。

火薬が有る無しの頃かどうかは正直知らんがイメージ的にってことで…。


そんな街並みの中、ポツンと一軒、和風と中華が合わさったような様相のお店を発見した。

軒先には乾物が並んでいるが………っ!?


「か、鰹節…だとっ!?」


他には数種類の魚の干物が並んでいたりするが…。


「シーバス、降ろしてくれ」


俺はテクテクと鰹節の前へ、手に取り匂いを確認。鰹節単体では匂いはあまりしないが…確かに香る。


「間違いない」


俺は鰹節を元に戻し、シーバスとエルディアを連れて店内へ………ガツッ、と引っ掛かる。扉が押せねえ………って、引き戸じゃねえか。


ちょっと恥ずかしい思いをしつつ、カラカラカラ…と引き戸を開ける。

シーバスかエルディアに開けさせれば良かった。…シーバスは引き戸だと見破りそうだな…。


「すいませぇん」


声変わりはまだまだ先の甲高い声で俺は入店する。


「いらっしゃい」


中には皺を刻んだ好好爺としたご老人…ではなく艶のある黒髪眩しい若い女性が奥のカウンターにいた。

一瞬、日本人か?とも思ったが瞳の色が青かったので違うな…と一蹴。


「ちょっと見させてください」


「どうぞ、ゆっくり見ていってください」


一瞬、こんな子供が?という顔をしそうになっていたが直ぐに取り繕い、黒髪の女性はそう言った。


さて…と店内を見回る。

敷地の問題かは分からないが店内は狭く、奥に細長い。奥の真ん中にあるカウンターに伸びるように通路があって、その両脇に棚が並び商品が陳列されている。


手前側(入口側)半分は乾物類が多く陳列されており、日本人時代の地方のお土産屋さんを若干思い出す。

奥の半分は器に小分けされた物が…。

粉状や粉状になっていても粗めの物、実のままの物と色々な色の物が多数多種陳列されている。

そして、入店して直ぐに分かったがこの匂い…間違いないこれは…


「………香辛料」


どれが何て言う香辛料かは分からないが俺には鑑定先生という心強いスキルがある。何とでもなるさ…何て思っていると俺の視界にポンポンポン…と香辛料の鑑定結果がところ狭しと表示される。

多いっ!多いよっ、鑑定先生っ!…あと今じゃない。


エルディアもシーバスも見たことが無いのか、何だこれ?な顔を開けるしているが…


「シーバス…手持ちでこの店の物、どのくらい買える?」


「はっ!手持ちですと全体の五分の一も買えないと思います。何分、単価が分かりませんし…」


そりゃそうだ。しかし、直ぐにでも全部持って帰りたいが…う~ん。仕方ない…今日持って帰るのは諦めて、後日持ってきてもらうことにしよう。


俺はそう決め、女性店員さんに話かける。

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