第58話 KA・RA・A・GE

グラム商会から戻った直後からシーバスは厨房へ向かい、無心でマヨネーズを作り始めた。

さすがシーバス…と言うべきか、商会で作った時の分量をすでに完璧に覚えていて、まったく同じくらいのマヨネーズが出てきたことには驚いた。


仕方がないので、今晩は唐揚げ祭りだっ!と言わんとばかりに俺は準備を始める。と言っても俺の小さな手では包丁を握るのも危ないので、実作業はシーバスと家の料理長エルディアである。


実は商会でのシーバスの様子がアレだったので、少しはこうなるだろうな…という予感はあったりした…ので帰りに多めに鶏肉は購入してきたのだ。


とりあえず今日は唐揚げってことでもも肉だけを使わせてもらおう。

もも肉だけで売っていれば良かったんだけれど、肉屋では一羽売りだったのが残念である。


「………………」


これはアレだ。レシピは隠さず教えちゃえば良かったかもしれん。

で、グラム商会長に動いてもらって肉屋にも働き掛けてもらい部位売りしてもらえるようにすれば良かったんだ。

言ってもあとの祭りではあるが…。


あ~、それなら牛肉、豚肉もレシピ教えて…っていう方が肉の買い物も楽になりそうか…。う~ん…早いうちにグラム商会長に相談だな。

そんなことを考えつつ、下準備を進める。


まずは下味つけ。

ニンニク、ショウガ、塩、砂糖を器へ。料理酒は当然無かったので風味の少ないワインで代用。少し風味が出そうだが…。

残念だったのは醤油が無かったこと。仕方が無いので塩唐揚げにした。

仕方が無い…と言っても俺は塩唐揚げも好きである。


器に一口大に切ったもも肉を投入。満遍なく揉みこみ、十分ほど浸け置く。

冷蔵庫…は無いので魔法で氷を敷き詰めた箱に肉の入った器を置いて半日置いておく。今日は夕飯時までだな。


まあその前に試食しないと…なので、早速揚げていこうか。


肉の汁気を切り片栗粉をまぶす。

片栗粉を探すのも面倒ではあったが、そこはさすが鑑定先生…確りと似たような粉物から探し当ててくれた。…さすがです。


そして油に投入して揚げていく。

油を準備する段階で「おいおいおいっ、そんなに使うのかっ!?」とエルディアと一悶着あったのは内緒である。


まあ、それは置いといて「置いとくなっ!」…熱した油に投入。油の温度180℃は鑑定先生任せ。

こんがり揚げ色がついて中まで火が通ったら油切り。


「よし、完成だ」


試食用なので三個の唐揚げを皿に、端にちょこんとマヨネーズを添えて完成である。


「では………………実食っ!!」

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