第57話 誕生(偽)
結論から言うと、俺が切り札を切ることなくグラム商会長は話に乗った。
グラム商会長は「しかし、これだとゼハールト家には利益はなかろう?」と言うが、俺は材料を卸してくれるだけで十分だ、と返す。
まあ、優先的に、少し安くしてくれたら嬉しい、とも付け加えたが…。
そしてグラム商会長がニヤリ…と笑う。
「ユーリウス………お前、マヨネーズに合う料理を知っているな?」
その言葉に静かに立っていたシーバスがカッ…と目を見開き、瞬動か縮地かは分からないがフッ…と俺の直ぐ側まで近付いていた。
お前、そんなの使えたの?あと近くに来られて黙られたら怖えよっ!?
そしてグラム商会長…さすが、と言うか…マヨネーズなんて万能調味料を作っておいて、それを浸けて食べる料理を知らないなんてないからな…。そりゃバレるか…。
なので俺は切り札バレしても当然ノーダメージなワケで…。
「そうですね………………では…」
条件付き…と言うか、グラム商会長の答え次第で教えましょう………取っておきをっ!
と言っても唐揚げなんだけどね、と心の中でテヘペロしておく。誰得かは知らんが…。
「俺の答え次第…だと?」
マヨネーズのレシピはさっきの通りで構いません。問題は卵です!
すでに普通に流通していないのは分かりました。それならば…
「ふむ…普通に数多く流通させて、数多くの一般に回せ。それも出来るだけ安く…か」
正解です。
そしてそのためには…
「養鶏…か」
正解。養鶏家業そのものを大きくしなければ絶対数は増えません。数が少なければ高くなり、多ければ安くなる。
「つまり家の商会で養鶏を事業として行う、もしくはすでに行っているところへの投資なりの拡大させるための協力…だな?」
生産、物流、そして販売まで…全てをグラム商会が取り仕切る。リスクは在るかもしれませんが、リターンは………デカイでしょう?
ついでに言えば、養鶏が拡大するということは…
「鶏肉も増える…か」
「どうです?」
グラム商会長は再び考え始める。…そして…
「良い話だ。だがそれもこれも教会次第だな…」
まあ…そうだね。
「では教会との話はお任せします。もし教会との話が纏まったのなら、さっきの話を現実的に進めるのなら………教えましょう、取っておきを!」
まあ、ただの唐揚げだし…他にも色々あるけどね。
「良いだろう…その時が来るまで楽しみに待っていよう。…よし、これから忙しくなるな」
こうして商談は終了。
と言っても俺にもゼハールト家にも入るお金はほとんど無いが…。
帰る前に、仕入れてもらった材料は今日は無料でくれた。お返しに商会長が使う分に『浄化』を掛けさせられたが…。
そしてグラム商会を出て帰る途中…
「戻ったら早速マヨネーズを作りましょう。混ぜるのはお任せください」
俺は早くもマヨラーを誕生させてしまったのかもしれない…。
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