第56話 切り札

『ボリボリボリボリ』

「…で、ユーリウスよ」


『ボリボリボリボリ』

「ん?」


『ボリボリボリボリ』

「この…マヨネーズ?だったか…安定して作れるなら間違いなく売れるとは思う」


『ボリボリボリボリ』

「思う?」


何言ってんだ、売れるに決まったんだろっ!?と思うが口には出さない。


『ボリボリボリボリ』

「ユーリウス様…『浄化』の問題が残ってます」


『ボリボリボリボリ』

「あぁ、そうか…」


『ボリボリボリボリ』

「どうするつもりだ?何か良案でもあるのか?」


ん~、ぶっちゃけると俺が…ゼハールト家の食事だけがなんとかなれば良いから、あんまり考えてなかったんだけれど…。

あっ、マヨも野菜スティックも無くなった…。


「そうだな…いっそ教会の人間をマヨラーにでもする…か?」


「マヨ…ラー…?」


若干悲しそうな顔をするグラム商会長…全然可愛くないから止めてくれ…。


「ん?ああ…マヨネーズが大好きな人のことをマヨラーって言うんだ」


あとシーバス…お前もマヨが無くなったあとの皿を悲しそうに見ているんじゃない。


「お前、それは…ほとんど洗脳じゃないのか?」


ふっ…グラム商会長もマヨの恐ろしさに気付いているようだ…。まあ、実際はそんなことは全然無いのだが…。


「人聞きの悪い…だけどそうなると思えるほどマヨネーズが美味しかった…と思ってくれていることの証左になりますね」


「む?………ふんっ、まあ、そうだな…」


「まあ、マヨラー云々は置いておいて、こんなのはどうでしょう?」


グラム商会でマヨネーズのレシピの特許を取得、そしてレシピの販売。必然的に卵の需要が高まり『浄化』が必要になってくるので教会にはお布施なり手数料なりが入る。

ここまでは良いですか?


「………うむ」


レシピを公開ではなく販売にしたのは、マヨネーズが消耗品だから、イコール無くなれば作る、作るなら卵が必要。なら卵の卸しを独占ないし大きく占めればいい。これで卵の売上は確保出来ます。


そしてレシピの販売は飲食店だけでなく、一般にも買えるように安く設定してください。そうすると…


「一般家庭にも卵が売れる…か」


そして教会には『浄化』の依頼が増える。必然的にお布施やらなんやらが増えるでしょう。しかし『浄化』が高くつくのなら卵は売れなくなってしまう。なので教会とは安く『浄化』してもらえるよう先に契約してしまいましょう。


「…なるほど」


これは薄利多売することでその分母を増やし、利益を増やすやり方。一つは小さいが…


「塵も積もれば…か」


exactly!と言いたいが、言っても分からないだろう。俺は普通に「…です」と答えておく。


「………………」


そして考え込むグラム商会長。きっと脳内ではリスクとリターンの計算が行われているのだろう…知らんけど。

そして俺はまだ切り札を隠している。


必要ならば切るぞ?………唐揚げという切り札を…。

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