第53話 出来る!
「孫のユーリウスだ」
「ほう…アンタが孫を連れて来るなんて珍しいにも程がある。何かある…そう言っているようなもんだぞ?」
義祖父さんに襟首を持たれ、ぶらーんと突き出された俺を一瞥したあと、また視線を義祖父さんに戻す商会長。…俺は無視ですかそうですか。
「孫をそんな風に持つもんじゃない、離してやりな」
おっ、そうでもないのか。義祖父さんはそう言われ「ふん…」とソッと俺を下ろす。
「マリウスが済まないな、ユーリウス坊っちゃん。グラム商会商会長のケイビル=グラムだ」
ケイビルは何かある、と思ったからこそなのか…俺の目を確りと見ながら、そう挨拶をしてきた。
なら俺も取り繕う必要は無いだろうし、逆に失礼にあたるだろう。
「初めまして、ユーリウス=フォン=ゼハールトだ。早速だが、グラム商会長…『マヨネーズ』って調味料………聞いたことはあるか?」
~~~~~~~~~~~~~~~~
結果から言うと物は用意出来た。
生卵、オリーブオイル、酢は柑橘系の果汁を代用することで、だが。
ネックはやはり卵だった。
大都市であるヴァーチェでは養鶏などの牧畜業などは行われておらず、近くの村から仕入れている。
元々、腹を壊すから、とその仕入れもしていない卵は入手困難というよりは販売自体されていなかったのだが、なんとか入手してもらった。
輸送時は氷を用意してもらい、出来るだけ早く届けてもらう。また割れ安いのでクッション性を高めてもらうなどやたらと手間暇が掛かるため、多少、お高くなるみたいだ。
まあ、グラム商会長は俺の話を聞き…
「万能調味料…それは興味があるな。だが本当に出来るのか?」
キラーン…と目を光らせて聞いてきたので…
「出来る!」
と自信満々に返答。ならば用意しよう、と物は集まったワケだ。
まあ、輸送しなければいけなかったので、集まったのは初めて訪問した日から二日経っているのだが…。
そして…
「来たか…」
「こんにちは、グラム商会長」
俺は再びグラム商会に訪問。ちなみに義祖父さんは「グラム商会行くけど来る?」と聞いたらソッと目を逸らしたので、一緒には来ていない。
「用意は出来た…出来たが卵はどうする?生で使うんだろ?このままでは使えんだろう?」
そう…それが最大のネック。
火を通しすらしない生卵なんて、この国では…もしかしたらこの世界全体でかもしれないレベルで使われていない。
原因はサルモネラ菌。まあこの異世界で同じサルモネラ菌かどうかまでは分からないのだが、その辺りは鑑定先生にお任せしよう。
…そう言えばシーバスの持っていたモノクル『
何でその時、生卵を使えるようにしなかったんだっ!?と今さらながら憤ってみる。
まあ憤っていてもしょうがないので話を戻そう。
俺はグラム会長の質問に答える。
「解決策は『浄化』です」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます