第46話 優雅な朝を!①

「お早うございます、ユーリウス様」


朝…語尾にハートが付きそうなメイドのその言葉に俺は優しく起こされ、微睡みの中、着替えを済ませる。

まだ覚めきらない目を擦りながら、歯磨きや寝癖などの身嗜みを整え、メイドさんに用意されたコーヒー…は三歳児には出されないので、少し冷やしたミルクをいただく。


そんな優雅な朝を期待していのに…


「お早うございます、ユーリウス様」


同じ台詞なのに、低音の渋い声。筋骨粒々とした戦闘も出来る執事、シーバスが俺を起こしに来る。


「コーヒーはブラックでよろしいですか?」


何でだよっ!?三歳児の舌にブラックが合うワケあるかっ!………ミルクと砂糖、多めでお願いします。


こうして俺の『俺…貴族になったらこういう優雅な朝を毎日迎えるんだ…』の夢は儚く消え去った。


しかし、これはいかん。毎朝シーバスのような厳つい初老のオッサンに起こされるのは俺の心臓にも精神にも良くない。

非常っに良くないっ!


早いとこ専属メイドさんを見つけ、シーバスには身の回りのお世話からは外れてもらわんと…。


しかしゼハールト家内部で武力は見せたものの、俺に人事権はほぼ無いし、なんなら自由に出来る金も無い。

もちろん武力による強権を発動すれば可能かもしれない、いや間違いなく可能だろうが、家の中でソレはしたくないからな…。


ではどうするか…?


「美人な専属メイドさんが欲しい」


こんなふざけたことを宣う三歳児がいるだろうか?

ワンチャンいたとしてもそんなエロ三歳児、家族からどんな目で見られるやら…。

セイ兄やレイナが大きくなった時に、酷く蔑まれそうだ。………恐ろしい。


「美人な専属メイドさんが欲しいからお金が欲しい」


もう発言がアウトである。

お金が欲しいって何する気だっ?って話だよ。いや、人を雇うのだからお金が必要なのは当たり前のことではあるけれど…。

三歳児の言うことではない。


「専属メイドにするので美人な奴隷を買おう」


発言が最低である。

三歳児云々ではない。もう何?人としてアウト。俺が他の奴に言われたら、もう無言でグーで殴るね。…三回は。


さて…ではどうすれば自然なかたちで美人な専属メイドさんをゲット出来るか?


メイドさんの増員は先日の使用人のリストラと獣人亜人の雇用をしたばかりでちょっと無理がある。当然、費用的にもだ。

これ以上、無理な増員は認められないだろう。


お金の問題。ラノベやアニメなら冒険者として活動して稼ぐのがテンプレだ。だが俺は三歳…冒険者登録出来るのは、この国では成人として認められる十五歳から。全然無理である。


奴隷制度を利用。日本人時代の倫理観など、とっくに壊れているから構わないが、やはり抵抗は少しある。

しかし国として認められているれっきとした商売でもある。利用しない手はない…が、ここでも引っかかるのは俺の年齢と費用の問題だよなぁ。


さて…どうすれば。…どうするのが良いか…。

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