第35話 OK?
カラカラと車輪を鳴らし、ゼハールト本邸の前に一台の馬車が止まった。
本来なら先触れなど無くとも使用人たちがズラリと並び出迎えるのだが…。
………この日は違った。
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「ユーリウス様、馬車が到着したようです」
朝、兄姉たちとの食事中にシーバスから報告を受ける。
レイラ母さんたちはまだもう少しかかるだろうから父親かな?
あっ…父親の呼び方どうするか…。前々世、日本人の頃は『おとん』、前世、勇者の頃は『父さん』だったな…。
う~ん…お父様、父様、辺りは恥ずかしいしなぁ。…とりあえず父親の人となりを見てから決めようかな。
「うん、分かった。…出迎」『これはどうなっておるっ!!シーバスッ!!』「…た方が良い…?」
「…このお声は、大旦那様…ユーリウス様のお祖父様ですね。少々…いや、大分ご面倒かと…」
突然の大声にちょっとビックリしたが…お祖父様ねぇ…そうかぁ~面倒かぁ~。
兄姉たちを見ると「あちゃー」みたいな顔をしている。セイ兄だけが少し怯えているようだ。
とりあえずセイ兄が怯えている、なんてことはあってはならないので…
「…よし、シーバス………行くぞ」
「…はっ」
俺はシーバスにそう言い、口元を拭って、次女セイラ姉の膝の上から降りる。
…仕方ないんだ、食事時は何故か定位置みたいに膝の上に乗せられるんだから。「あ~ん…」とかされて喜んでいるワケではない…いや、ホント。
シーバスを連れ、食堂を出る。食堂から距離も大してない、然程大きくもないが多少見た目だけは良い本邸のエントランスホールに来ると、先日の騒動で俺が残した使用人たちが勢揃いしていた。
そして、その並びの前にいる男性。
派手すぎない黒を基調とした格好に少し縦長な黒の帽子。片手に持っているのは銀に輝く馬の装飾が付いた黒い杖。
その目は切れ長…と言うよりはキツい目付きだな。その目で使用人たちを睨み付けている。
使用人たちを前に今はまだ何も言っていないようだが、今にも爆発しそうな雰囲気だ。
あぁ、面倒そうだなぁ…と思って少し歩を緩めると…
『バタァンッ!』と勢いよく二階の部屋の扉が開かれ、第一夫人『マイア=フォン=ゼハールト』が飛び出してきた。
「お父様っ!」
「おお、マイアッ!」
バタバタと階段を降り、男性に駆け寄るマイア義母さん。キツい目付きから一転、フニャリと顔を崩しマイア義母さんを受け入れる男性。
お父様…って言ってたな。…なるほど、あの目付き、確かに似ている。
…ということはだ。…などと確認しなくてもシーバスの言葉や兄姉たちの反応で大体分かってはいたが…。
つまりだ…このジジイが今までの元凶ってことでOK?
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