第11話 半年!
母親とのご対面からさらに三ヶ月、生後約半年が経過した。
生後五ヶ月辺りで『つかまり立ち』を会得した俺はその一ヶ月後には順調に『歩く』を取得。…いや、『つかまり立ち』と『歩く』はスキルじゃねえ。
しかしドアノブに届かないという高き壁は未だに俺の前に立ちはだかり、自分の家だというのに自由に移動出来ないのは相変わらずである。
ちなみに赤ん坊が歩き出すのは通常ならば一歳から一歳半くらいらしいので、生後半年で歩き出した俺の成長は通常の倍は早いということである。(鑑定先生調べ)
これも常日頃からの訓練によるものだろう。訓練可能なモノはスキルレベルが上がっているし魔力量もかなりのモノになっている。既に前世で使っていた最上級魔法を使うにしても魔力量が足りない、なんてことは無いほどの魔力量を保持している。………使わないが。
つかまり立ち&歩く、はちゃんと母親に披露。都度抱き締められて恥ずかしかったが、コレも赤ん坊の義務だろうと「キャッキャッ」言いながら応えた。…義務である。
ついでにセバスさんは涙し、メイさんには抱き着かれた。「キャッキャッ」はした………義務である。
また、立ち上がった時に自分の柔らか過ぎる膝を見て不安を覚えた俺は、膝に追加の『部分強化』を施した。『身体強化』のスキルレベルが上がったのは言うまでもない。
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『レイラ=フォン=ゼハールト(19)』
俺の母親である。
見た目十代にしか見えないが………十代だった。若すぎっ!…と思わないでもないが、この中世風な異世界ならば普通なのだろう。
前世…元勇者だった時も母親は若かったし…。
前々世、日本人の時の俺から見ればギャルのレベルである。…ギャルは死語か?まあ、ソレはいいか…。
母親であるレイラが来たことによって、セバスさんとメイさんと合わせ格段に会話をすることが増え、俺の聞き取れる情報も増えたのだ。
その中でも重要そうなモノを抜粋。
・レイラ=フォン=ゼハールトはとある商家の次女でゼハールト準男爵の第三夫人である。
・第一夫人が前ゼハールト準男爵の第一子で嫁いだ婿が現ゼハールト準男爵である。…が実権はこの第一夫人が握っているようだ。
・第二夫人は騎士爵の長女で第一夫人とは学園の同期生になるらしい。その縁故で第二夫人の座に就いたとかなんとか…。
・現在の家族構成が…
前当主 前当主夫人
現当主
第一夫人 長男 長女 次女
第二夫人 次男 三男 三女
第三夫人 四男 五男←今ここ
いや、今ここ…じゃねえからっ!?まったく鑑定先生はどこからネタを引っ張ってくるのか…。………俺の記憶からですね、さーせん。
しかし、なるほど。こうなると俺は庶子ということだな。準男爵家とはいえ貴族は貴族、俺と会ったことはないが兄の四男は肩身が狭いのではないだろうか。
母親が三ヶ月も会いにこれなかったのだ、四男の兄にも何か事情がありそうだ。
…となると問題がありそうなのは第一・第二夫人と前当主夫妻。………父親である現当主はまだわからんが果たして…ってところかな。
いずれにしても生きにくそうな世界だが…元勇者の時と同じようにはしないし、ならない。俺は俺が楽しく生きるために今回の生を使う。
邪魔をする奴は貴族だろうが王族だろうが…
おっと。とりあえずは今までと同じように力を付けつつ情報収集だな。
生後半年じゃたかが知れているが…しばらくは大人しく身体の成長を待つとしよう。
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