第10話 邂逅!
生後三ヶ月を過ぎ、俺は驚異的な早さでハイハイの境地に到達。コレによりベビーベッドから出してくれたので、室内を縦横無尽に移動していた…ハイハイで、だが…。
膝、肘など床に接する箇所は痛いので付与魔法の『硬化』を使用。付与魔法のスキルレベルも上がった。
当然、室外に出ようと試みたのだが、ドアノブまで手が届かないという高き壁に阻まれる。
結界魔法で結界を階段のように展開させることも思いついたが、ソレはソレで赤ん坊がやって室外に出るのはオカシイか、と思い留まる。
もう少し自然に出れる、もしくは出してくれるように誘導しよう。
この三ヶ月で集まった情報は多くはない。
基本的に俺のところにはセバスさんとメイさんしか来ないからだ。
なので二人が室内で会話している時は注意深く聞くようにしているのだが、有用な話はあまり多くはなかった。
それでも今、俺が集めることが可能なソースはここだけなので聞き逃さないようにはしている。
余談だが、この行為で『聞き耳』スキルを獲得、『隠密』に統合された。耳を澄ますと前より少し良く聞こえるようになったのは言うまでもない。
情報こそ集まらなかったものの、大きな変化は一つあった。
「ユーリウスッ!」
「ぁぶっ!?」
「あぁ、会いたかった…ユーリウス」
「………………」
俺が『俺』と自覚してから全く姿を現さなかった母親とのご対面である。
『ギュウッ』と抱き締められた俺が感じたのは暖かさと優しさ…。
そして赤ん坊としての本能なのだろう…安心感を抱いていた。
その一方で、何故今まで来なかったのだろうか?という疑問を持ったが、潤んだ瞳で俺を抱き締める彼女を見る限り、何か理由が在るのだろう…と冷静な俺がいた。
はい…嘘です。
予想以上に母親が美人さんで、その人に抱き締められているのだから全然冷静じゃありませんごめんなさい。
「奥さま…坊っちゃん…」
「奥しゃまぁ………坊っちゃんんん…ぐしゅ」
いや、そこの二人感動してないで何とかしてくれまいか…。恥ずかしいんだが…。
そんな俺の心境に気付くワケもなく…セバスさんはキレイなハンカチで目元を押さえ、メイさんはメイド服のエプロンでズビズビ鼻をかんでいた。エプロン、直ぐ洗ってね。
うーん、しばらくこのままの状態が続きそうだな…。仕方がない…こんな感動の場面に水を差すほど、俺はアホではない。
喰らうがいいっ!今!必殺の…
『本能に任せた極上ベビースマイル(偽)!!』
「だぁ!」
「っ!?ユーリウス!」
『ギュッ』と抱き締めが強くなる。良かろう、甘んじて受け入れよう。
あと鑑定先生は俺の脳内必殺技に(偽)って入れないように…(偽)ちゃうわ。
こうして俺は母との邂逅を果たし、セバスさんとメイさんに母親を加えた新しい生活を送ることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます