第2話 勧誘

「あれ、知らなかったっけ?僕が男の娘だってこと」


 へっ...??碧さんが男...??


「えっ?男?」

「あ、ごめんごめん。言っちゃいけなかったんだった。これは二人だけの秘密ってことで」


 僕は彼女?いや彼の衝撃の一言で何も考えられなくなってしまった。言っちゃいけないと言っていたが、どういうことか理解できない。


「それで、ボクは男なわけだけど付き合う?付き合わない?」


 まさかの、男の娘に加えてボクっ娘って神かよ!こんなにも好みに合う人がいただなんて。しかも付き合っていいと言ってる。付き合わないという手があるだろうか。


「も...もちろん、付き合わせて頂きます!」

「オッケー、じゃあ改めてよろしくね。そうだ、これボクのLIMEアカウント」


 そう言って彼女はQRコードを出してきた。ボクがそれを読み取り、LIME交換した。碧さんとLIME交換をした。それも恋人として。なかなか興奮が収まらない。この陰キャの僕とあの碧さんがカップルなんて誰が信じるだろうか。


「それじゃあ、また明日」


 そう言って、碧さんは去っていった。僕は小さくなっていく碧さんのことを眺めることしかできない。


 この夜、早速碧さんにLIMEしてみた。友だちの欄に碧さんの名前がある。他には家族と公式アカウントしかない。初めて交換した家族以外のLIMEアカウントが女性、しかも彼女なんてどうあがいても信じられない。そんなわけで碧さんに聞いてみた。


「なんで僕と付き合ってくれたんですか?」

「だって秋本君、素質あるから」


 おそらく、部活で吹いているトロンボーンの話だろう。自分ではあまり上手く吹けているとは思わなかったが、碧さんにこういうことを言われるととても嬉しい。


「本当ですか?」

「うん、ちょっと女顔してカワイイし、痩せ型だからレディースも着れるだろうし」


 ん...?もしかして、トロンボーンのことじゃない?


「トロンボーンが上手いって話じゃないんですか?」

「え?そんな話してないけど?女装の素質があるな〜って」

「碧さん、もしかして僕に女装してもらうつもりですか?」

「そうだけど?」


 僕、女装させられるの?素質ってそういう意味だったの?


「いや、僕女装する気ないですけど」

「別にいますぐってわけじゃないから」

「嫌です」

「そっか、いろんな人に誘ってみたけど誰もしてくれないんだよね」


 まじか、この人僕以外にも誘っているのか。ヤバい人じゃないか。だから誰からも好かれていなかったのか、とやっと理解した。


 この後何件か通知が鳴ったが、無視した。あんなヤバい人、すぐに別れてやる。


 翌朝、目が覚めるとさらに通知が増えていた。全て碧さんからだった。もちろんシカトする。


「海里、起きてるなら早くご飯食べなさーい」


 母が起きがけの僕を呼ぶ。眠たいながらも下に降りる。食卓にはパンとインスタントのスープ、健康に良さそうな菌が入っているヨーグルトが置いてある。


 朝食を終え、学校に行く準備をする。カバンに教科書を入れ、着替える。玄関を出、学校に着く。


 教室に入ると、碧さんが僕のことを睨んでいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕の彼女は男の娘 マグノリア @magnolia_20141107

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ