僕の彼女は男の娘
マグノリア
第1話 告白
散っていく桜の花びらが視界を淡い桃色に染めてゆく。校舎の向こうには紺碧の空が広がっている。
桜が花を咲かせるのは3月中旬で、例年は始業式までは持たない。しかし今年は冬の寒さが残っているためか桜が遅咲きなようで、まだ散っている最中だ。
高校2年生になった僕、秋本海里には好きな人がいる。同じクラスの中島碧だ。短髪でボーイッシュな彼女は、男子からというより女子からモテる。なので彼女の周りにはいつも女子ばかりが集まっている。
僕は幸いにも彼女と同じ吹奏楽部に入っている。部活での彼女は後輩の面倒見が良く、後輩からの信頼も厚い。それに加えて彼女は色々なコンクールに出ており、何度も賞をもらっている。
とにかく超絶カワイイ。めちゃくちゃカワイイ。この上なくカワイイ。
そんな彼女に僕は高1の秋から好意を抱いていた。短髪で端正な顔立ち、彼女は僕の好みのど真ん中をついていた。どうしてもどうしても彼女のことが好きだ。しかし、ド陰キャのボクには到底話しかけられない。
新学年が始まり1週間が経つ。今日こそ心機一転勇気を振り絞って告白をするつもりだ。そのためには、彼女を校舎裏の人が少なそうな所に呼び出す必要がある。今日は部活がない日なので、彼女を呼び出すのは容易だ。僕は机の中に、手紙を入れておいた。
「碧さん、少し部活で相談があるので今日の放課後に校舎裏に来てくれませんか?」
自分でもこの拙い文章に恥じらいを感じる。そもそも相談があるなら部室で話せばいいじゃないか、と思いつつも期待通り来てくれることを願う。
授業が終わるチャイムが鳴り、いよいよ放課後になった。校舎裏で彼女を待つ。胸の高まりが抑えきれない。
しかしその興奮も時間が経つにつれ収まってきてしまった。1時間は待っただろうか。それでも彼女は現れない。辺りは少しずつ暗くなっていく。もう来ないだろうと思い、帰ろうとした時のことだった。
「ごめん、遅れちゃって。秋本君だよね?」
僕はびっくりして心臓が止まるかと思った。彼女がここに来たなんて、にわかに信じがたい。本当にここに彼女がいる。
「は...はい...あ...あ...秋本です...」
「ごめんね、待たせちゃって。ちょっと友達と絡んでて」
僕はテンパってしまって、うまく言葉にできない。
「それで、相談って?」
「ト...トロンボーンの話な...なんですけど...」
彼女と僕はトロンボーンをやっており、彼女によく相談する。ひとまず部活の相談は済ませた。あまりうまく話せていなかったが、なんとか会話にはなっていたようだ。
いよいよ告白をする時が来た。しかし緊張で頭が真っ白になって上手く言葉にできない。
「碧さん、好きです。付き合ってくらさい!」
言ってしまった。遂に言ってしまった。これで振られようが全く気にしない。というか、こんな僕が受け入れられるわけがない。彼女は少し考え込んだあと、答えを出した。
「ありがとう。よろしくね」
えっ...もしかして、成功した...?ありえない、これは夢だ。どうしてこんな僕が、こんなにもカワイイ彼女と...?頭がパンクしてしまい、フラついて壁にもたれ込んでしまった。
「だ、大丈夫?」
大丈夫なわけない。もう頭が働かない。なんで受け入れてくれんだ?そんな僕に彼女は衝撃的な言葉を放ってきた。
「あれ、知らなかったっけ?僕が男の娘だってこと」
へっ...??碧さんが男...?
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