約束なので…

 約束なので急いで上村にメールを送る。猫たちの近況を、ジンジャーの活躍を、安藤さんの話を、始めてこんな長いメールを打った。楽しくてワクワクした。

 すると速攻で返事をくれた上村は、

「ジンジャーは捕まえられそうにないけど、子供を貰い受けることは出来るかも知れない。一度床屋さんへ様子を見に行こうかな」

 と言っていた。

 そこまで猫が好きだったなんて、一緒に仕事をしていたジンジャーとクレオの子だから思い入れが深いのかも知れない。因みにサバトラの名前はクレオ。頬に見事なクレオパトララインがあるからなんだって。それがどんなものなのか想像もつかない。

 そうこうしているうちに、遂に…周りが勝手に盛り上がって奏の結婚式の日取りが決まった。

 いつでも良かったはずなのに、この家がやけに広くて寂し過ぎるとか、日用品もないガラーンとした部屋をどうしたもんかと勝手に世話を焼いて、音楽仲間も此処ならガーデンウエディングも有りと乗り気になって、それなら会場の予約もいらないからいつでも出来るじゃないかと計画は着々と進んだ。

 頭の上に夏の大三角が見えるうちに、夕方から星を観がてらやろうとキャンプ好きの周防が決めて、天気図とにらめっこ。

 その日は9月1日土曜日の5時からとなった。6時半の日の入りまでに式を済ませて、その後庭に明かりを灯して軽いディナー。7時過ぎにはすっかり灯りを落として星を見た後、演奏会をしよう。

 蘇芳がピアノを弾く。田耕がカポーンを叩く。美里がヴァイオリン。空には天の川。此処はおとぎの国なんですか?

 主催者が誰かもはっきりしない。アトリエを陣取って、サプライズを受ける新郎の前でああだこうだと相談してるんだから計画は丸聞こえだった。

 次の日取りのいい日。美里の家財道具が運び込まれ、カーテンも涼しくなった風にはためいて、殺風景なこの家から家庭の匂いが立ち上り始めた。

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