第45話 夜中の相談事
王妃様と別れた私は、すぐさまその足で私が与えられた部屋を通り越して、クロードさんの部屋へと訪れた。
コンコンコン──「リゼです。クロードさ──」
言い終わる前にバンっ!! と勢いよくドアが開かれ、中から少し髪を乱したラフな格好のクロードさんが飛び出してきた。
「ひゃっ!! び、びっくりしました……」
「ご、ごめん、リゼさん。あの、どうしたの? こんな夜遅くに」
動揺しながらも言葉を放つクロードさん。
「少し、相談があって……」
やっぱりこんな時間に不躾だったかしら。
クロードさん日中は聖騎士の仕事で忙しいし、疲れてるだろうし──。
「あ、あの、やっぱり明日で……」
そう言って今日は部屋に帰ろうとする私を「ちょ、待って!!」と言いながら私の手を取り、呼び止めるクロードさん。
「あー……っと……、こんなところじゃなんだし、入って。話、聞くから」
そう言って迎えにきてくれたクロードさんの好意に甘えて、私は彼の部屋へと足を進めた。
広い室内の奥にあるベッドは少し乱れていて、今まさに眠ろうとしていたのだろうと伺えて、申し訳ない気持ちになる。
「ごめんなさい。寝るところでしたよね」
「大丈夫だよ。俺にとって、リゼさんより大事なものはないんだから。睡眠なんてなくても生きていける」
爽やかに微笑むクロードさんがソファへと私をエスコートして、二人隣り合わせでソファへと腰を下ろした。
「で、話って?」
「あ、はい。実はベアル様のことで」
私がベアル様の名前を口にだすと、クロードさんは明らかに眉を顰めて「あぁ、それか」とこぼした。
「王太子妃様にご協力いただきたいことがあるのです」
「ん? 義姉上に? 何をだい?」
「実はですね、お出しするご飯については大丈夫だったのに皆様と食事を取らなかったのは、貴族女性の
わかったことを早く話さねばと私が彼に詰め寄るように顔を近づけると、すぐ近くからごくりと喉が鳴る音が響いた。
「え……えっと、香水の匂いもダメだから、一緒には食べない、と?」
何故か視線を逸らし気味にクロードさんが言って、私は大きく頷いた。
「香水の匂いと料理の匂いが混ざって、私たちではそこまで気にならなくとも、嗅覚に優れた狼獣人のベアル様にとってはきっと気になるものだと思うんです。だから、王太子妃様に3日間、実験の協力をしていただきたいんです」
「実験?」
「はい。まず、明日は香水をつけずにつけずに1日食事をとってもらいそこでベアル様の反応を見ます。そしてもし彼が食事を共にしたら、その可能性は濃くなりますよね? なので、確証素材を集めるためにも、もう一つの状況も見てみます。次の日は香水をつけて1日食事をとってもらいます。ここでも同じように反応を見て、もしダメならさらにその線は濃厚になります。そして三日目、再び香水を無しにしてもらって、検証結果としたいんです」
私が説明すると、クロードさんは感心したように「なるほど……」とつぶやいて「早速兄上に言ってくる。ちょっとここで待ってて」と言って、部屋から出て行った。
「え!? ちょ、ちょっと!?」
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