第12話 ワガママ【ASMR】/積極的な森島先輩につい……

○スパ施設・シャワーブース

   #サウナを出た主人公とはるか、シャワーブースにやってくる。

   SE 濡れた土間コンクリートの上を歩くぺたぺた的な音。

   #シャワーブース、個室型に各ブースが仕切られている。

   #はるかのセリフ、スパ施設の広い空間のいるので、反響して少し響くイメージ。


はるか

「ふあ~……ふたりとも、すっかり汗だくね。」

「思いっきりシャワー浴びて、シャキッとしましょ♪」

「……それにしても、いろんなブースがあるのね~。」


「キミはどこに入るの?」

「ふ~ん、このレインシャワーが使えるブースにするの?」

「私はどうしよっかな~……」


「ん? ここ、電話ボックスみたいでちょっと狭いわね……?」

「なになに……?」

「へ~、壁のあちこちからシャワーが吹き出すんですって! 楽しそう♪」


「私、ここにするわ!」

「それじゃ、さっそく入りましょっか。」

「……あ!」


「ひとりでシャワー浴びるのが寂しいからって、こっちに来ちゃダメよ?」

「いい? 覗いたりしちゃ絶対ダメだからね!」


   #主人公とはるか、それぞれ違うブースに入る。

   #SE 扉の開閉音。

   #SE シャワーを出すレバーを回す音。

   #SE シャワーの流れる音。

   #少しの間(10~15秒くらい?)、シャワー音だけが響く。

   #不意に、主人公の耳元ではるかの囁き声がする。


はるか

「お客様、かゆいところはありますか?」


   #主人公、驚いて転びそうになるが、はるかに抱きついてなんとか踏みとどまる。


はるか

「ひゃっ!? きゃっ!!」


   #SE シャワーが激しく飛び散る音。

   #抱きついた形のまま、密着した顔の近くではるかの囁くような声がする。

   #SE シャワーを止めるため、レバーを回す音。


はるか

「……ふぅ……大丈夫? 転ばなくてよかった……」

「驚かせちゃってごめんね。」

「その……来ちゃった……。」


「ほ、ほら……特別なデートに連れてきてくれたご褒美、あげるって言ったでしょ?」

「キミのおかげで、今日はとっても最高な日になったから……。」

「だから、背中を流してあげようかなって思って……」


   #主人公、そう言われても恥ずかしさが勝って遠慮してしまう。

   #はるか、それを聞いて、落ち込みつつも少し怒っている。


はるか

「……こういうこと、まだ恥ずかしい……?」

「そっか……そうだよね……わかった……。」

「私たち……こんなことするには、まだ早いもんね……。」


「あはは……私だけ、空回りしちゃってたのかも……。」

「一緒にお風呂入ったり、サウナに行ったりしたくらいじゃ、ダメなんだ……。」

「恋人らしいことするって、難しいな……。」


「……いきなり変なことしちゃって、ごめん……。」

「すぐ出てくから……」


   #はるか、踵を返して主人公から離れようとする。

   #主人公、はるかの寂しそうな顔を見て、思わずその腕を掴んで引き止める。

   #はるか、振り返らず、低いトーンで尋ねる。


はるか

「なに……?」

「用がないなら、腕、離して……。」

「……え? 今なんて……?」


「《体の臭いを嗅いでほしい》……?」


   #はるか、急に変なこと言われて混乱。


はるか

「ど、どういうこと……?」

「《嗅げばわかる》って……なにがなんだかわからないんだけど……。」

「……わかった。じゃあ、首筋からね……」


   #はるか、言われたとおりに主人公の体の臭いを嗅ぎ始める。

   #首筋から胸元、また首筋に戻り、今度は顔の周りを入念に嗅ぐ。

   #はるかの匂いを嗅ぐ「すんすん……」という音が聞こえてくる。


はるか

「別に変な匂いしないよ? キミの匂いがするだけ……。」

「タ、タネウマクンの臭い? そんなのわからないけど……?」

「《美也ちゃんに『着ぐるみのすっぱい臭いがする』って言われて、避けられてる》……?」


「《深刻な問題だから、私に臭いを落としてほしい》……。」

「ぶふっ……ふふふ……!」


   #はるか、我慢できずに吹き出してしまう。


はるか

「あはっ、あはははっ、なにそれ!」

「真剣な顔で変な話しないでよ! あははははっ!」

「はーっ……はーっ……ほんと、キミはズルいなぁ。」


「そんなこと言われちゃったら、絶対笑っちゃうじゃない。」

「……オーキードーキー! 私に任せて♪」

「どんな臭いだろうと、ぜーんぶ綺麗に落としちゃうんだから。」


「その代わり……私のことも洗ってくれるわよね?」


   #SE シャワーを出すレバーを勢いよく回す音。

   #SE 全開で勢いよく吹き出すシャワー音。

   #はるか、さっきとは違い楽しそうな声色で主人公と身体を洗い合っている。

   #SE 泡で体を洗うゴシゴシ音。

   #SE シャワーがあちこちに飛び散り跳ねる水音。


はるか

「あははは、くすぐったいよ!」

「《ちゃんと真剣に洗ってる?》」

「私はちゃーんとゴシゴシ洗ってあげてるのに~。」


「きゃあ! 急に背中流すのはダメだってば!」

「さっきはあんなに緊張してたの、なんだったのよ~!」


   #はるか、ブース内にまだ使っていないレバーを見つける。


はるか

「……あれ? このレバー何かしら?」


   #はるか、レバーを引く。

   #SE 金属のレバーを引く音。

   #ブースの天井からレインシャワーがザーッと流れてくる。

   #SE 先ほどとは違うシャワー音があれば(レインシャワーなので、雨っぽい音とか?)


はるか

「きゃあ!? あははは! これがレインシャワーね!」

「本当に雨の中にいるみたい! 気持ちいい~!」

「あははは! あはは……はは……」


   #主人公とはるか、頭から全身にかけてビショビショに。

   #はるか、徐々にトーンダウンしていく、無言に。

   #釣られて主人公も無言になる。


はるか

「…………」


   #10秒ほど、シャワー音とはるかのしずかな息遣いのみが響いている。

   #冷水を浴びすぎたせいで、思わずブルッと震えるはるか。


はるか

「身体、少し冷えちゃったみたい。」

「シャワー、そろそろ止めなきゃね」


   #はるか、レインシャワーを止める。

   #SE キュッ!というレバーを下げる音。

   #再び無言になり、はるかの息遣いだけ聞こえる。

   #はるか、目を伏せて、ぽつりぽつりと呟くように言葉を発し始める。


はるか

「……すごく静かよね。」

「だって、シャワーブースの周りにいるの、私たちだけだもの。」

「だからね、ここに来ちゃった……。」


「私からのご褒美……あげるなら今しかないって思ったの。」

「でも、上手くいかなかった。」

「キミに、また助けられちゃった。」


「せっかく、すっごい勇気だしたんだけどな……。」

「やっぱり私、迷惑かけてばかりね……。」

「でも、私は……」


   #主人公、はるかの顔にぐっと顔を寄せて、目を見つめる。


はるか

「《びっくりしたけど、最高に楽しかった》……?」

「本当に? 本当に、特別な思い出、できた?」


   #主人公、力強く頷く。


はるか

「あはは……そんなに思いっきり頷かなくていいよ。」

「そっか……。」

「あなたが笑顔になってくれて、よかった……」


   #はるか、満足そうに微笑むと、主人公の顔を優しく掌で包み、眉毛を愛おしそうに撫でる。


はるか

「ねぇ……。もう少しだけワガママ言っていいかな?」

「あなたから、もうひとつだけプレゼントが欲しいの。」

「私が絶対忘れられないような、特別な贈り物がいいな」


   #はるか、そっと顔を近づけてくる。

   #主人公も受け入れて、キスをする二人。わずかな時間の後、唇が離れる。

   #はるか、そっと主人公の唇を撫でる。


はるか

「……ちゃんともらえた。あなただけの、特別なプレゼント」


   #主人公、今更ながらドキドキしすぎて思わず後ずさりし、再びシャワーのレバーに触れてしまう。

   #SE シャワーの音


はるか

「あはっ、ははははっ! やっぱりキミってズルいわ!」

「……身体、すっかり冷えちゃったわね。」

「もう一度サウナに入りましょっか♪」


   #はるか、最後にまたぐっと主人公の耳元に顔を近づけて囁く。


はるか

「これ以上は、本当に二人っきりの場所でね♪」



《最終話へ続く》


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『ASMRボイスドラマ アマガミ Vol.2 森島はるか編』(CV・伊藤静、CV・浅川悠、CV・佐藤利奈)

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