Episode 2.「わからないことだらけ。それでも僕私は」

プルルルル、プルルルル、プルルルル


「はい。松野です。」

「松野さん、大変なの」

「あ、後藤さん。今日は1日ありがとうございます。大輝の面倒みてもらっt」

「そうなんだけど、いなくなっちゃったの大輝くん」

「え?」

「公園にいたんだけど、ちょっと目を離した隙に、いなくなっちゃって。周人に聞いても、わからないって」

「もう、またあの子ったら。どこで遊んでました?すぐに行きます。」


ガチャ。


「もう、どこ行ったのよ。大輝〜」

松野は急いで玄関から飛び出した。

するとそこには、大輝が、立っていた。

「も〜う。大輝!どこ行ってたの?周人くんと遊んでいたんじゃなかったの?心配したんだから」

「大輝くん、道に迷っちゃったみたいなんです。大きな犬さんについて行ったら、わかんなくなっちゃったって言ってました。」

「あ、そうですか。って、えっ?!?!?」

大輝の後ろには顔と手以外刺青、耳にはピアスまみれで背中にギターを背負っている男の人が立っていた。大輝に夢中で全然気が付かなかった。

「お兄ちゃんがね、家までついてきてくれたの」

「なんか、すいません。ありがとうございます。」

「松野さん、弟いたんですね。」

「え?なんで私の名前知ってるの?もしかして、同じ学校?」

「同じ学校って、同じクラスですよ。僕。3組の。中島です。」

「え?中島って、あの中島?!?いっつも暗くて、何考えてるかわからないあの中島?」

「やっぱ、そう思われてたんだ、、、。」

「あーあ、ごめん。ごめん。普段の中島とまるで別人だから、びっくりしちゃって」

「大丈夫です。気にしないでください。大輝くん。家に帰れてよかったです。じゃ、僕はこれで、失礼します。」

「なんか今日はありがとうございました。」

中島が帰ろうとした時、大輝が中島の腕を掴んだ。

「お兄ちゃん、うちで一緒に遊んでよ」

「大輝、無理言わないの。お兄ちゃんも忙しいんだよ。」

「いえ、この後、僕は予定ないので、松野さんが良ければ大丈夫ですよ。」

「やったーーーー!!!」

「そうですか。じゃ、どうぞ」





          *





ほんとに今見ている中島と昨日の中島は同一人物なのだろうか。正直、疑いが隠せない。


「中島、ちょっと話いい?」

「うん、いいけど。」



「え、大輝くんが遊びたいって言っているから家にまた来て欲しい?」

「大輝が言ってるのよ。私じゃない。」

「・・・・・」

「どうしたの?」

「いや、松野さんが話しかけてくれたことにびっくりして。僕こういうの昔から苦手なので。」

「お互いに他人に見せてない姿見た訳だし、秘密の共有者っていうか、なんていうか。まあ、そういうことだから、お願いね。」



          *



それから、

中島がよく家に来るようになって

松野さん家によく行くようになって


      気づいたことがある。


オタクまでは行ってないが、アニメは好き。

やっぱりオタクって思われてた。


バンドのギターをやっているが、みんなには知られたくない。

約束は守るタイプである。


刺青とピアスは中学の時かららしい。

性格は結構ズボラな方である。


よく見ると肌が綺麗。

目はくっきりな奥二重。



まだまだお互い、わからないことだらけ。


        それでも


僕は、苦手な人との心の距離が

私は、私の本当の姿が


ちょっと縮まっていく

中島になら見せてもいいような


      

      そんな気がしている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る