15センチ未満の恋

あきお。

Episode 1.「変わらないものと見せたくないもの」

「それじゃあ、今から2人か3人のグループに分かれてくださ〜い!」

「はーい!」



「あれ、中島くん1人なの?」



          *

         


この世にいる誰しも、人との間には心の距離があるはずだ。家族であれ、友達であれ、恋人であっても。大抵みんなそんなものだと思う。僕の場合は、その距離が人より長い。これからもずっとそんな日常が続いていく。


        はずだった。



          *



「ねえ、ひまり〜。昨日のテストどうだった?」

この子は私が小学生の頃からずっと一緒にいる親友、長谷川美佳。

「う〜ん。そこそこかな」

「私やばいよ。絶対今日も撃沈するよ〜」

「じゃあ!少しでも今勉強しないと!ほらやるよやるよ!!!」





ひまりの肘がシャーペンにぶつかり、シャーペンが宙を舞った。

その時、ちょうど中島が通りかかる。

「松野さん、これ」

中島がシャーペンを拾う。

「あっあ、ありがとう」

中島はそのまま自分の席へ向かった。

「ねえ、ひまり。今のって、中島だよね?」

「うん」

「中島っていっつもあんな感じだよね。暗いし、何考えてるかわからないっていうか。オタクっぽいし。」



          *



この世にいる誰しも、人に隠したい秘密の1個や2個はあるはずだ。家族であれ、友達であれ、恋人であっても。自分から知ろうとしなければ、人の本当の姿なんてわからない。自分の本当の姿なんて見せたくない。みんな大抵そうだと思う。だから、みんな仮面を被った自分を演じているのだ。まあ、自分もそうだけど。


両親は、私が中学生の頃に離婚した。だから今は、母と弟と3人で暮らしている。母は朝早く仕事に出かけ、帰ってくるのは私達が寝ている頃。そのため、家の家事は全て私がやっている。弟の幼稚園の迎えも料理も洗濯も。こんな姿誰にも見られたくない。この私の何ひとつ変わらない日常はこのままずっと続いていく。

 

        はずだった。

     






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