2.いざ、うずうずへ
私は13年ぶりに父方の祖父母の実家に向かう。私は実際の所ずっと精神を病んでいたのだ。
であるため、ある時期を境に一度も父の実家には行っていなかった。私はクリ2と共に向かう。だって家族は休みの日も仕事で忙しいからね。別に父の実家に友人と行っちゃいけない理由はないはずだ。私は心が弱く一人ではとてもではないが行けない。だからクリ2と行くのだ。クリ2、好き好き大好き。ちゅっ。私はヴィアンではないよ。性的な感情がない、というワケでは無いけれどノーマルだし、性的なものに対する嫌悪がある。それにロナセンの影響で性欲はゼロだ。私はアスピリンを飲み、トム・ジョーンズの鬱い短編を思い出しながらクリ2とべったりになって地下鉄に乗る。乗る。乗る。如何にも、私は人間yo-yoである。行けば戻る。ベニー・プロフェインじゃないけれど、今自分を見失ってるの。うん、見失ってる。「ねぇクリ2、喉が渇いたの。なにか飲み物は無いかしら?」「うむ。あるね。炭酸の抜けたコーラがね」「んじゃあそれでお願い?」「うむ。いいよ。オクリは喉がよく乾く子だね。大丈夫かい?」「うん。大丈夫よ。気を使ってくれてありがとう。うれしいわ、炭酸の抜けたコーラは好きだから」「うん。それはよかった」
* * * * *
「あのね、私は子供の頃から泣かない子だった。だからよく周囲から褒められたわ。偉い、ってね」
「うむ。泣かないね。おリスは。たまには泣いてるところが見たいな」
「ハッハ。私はね、泣くことが恥ずかしい事だと思っているのよ。もちろん大きな視点でみたらそれは間違っていないかもしれないわ。けれどね、泣けないっていうのはとてもさみしい事なの。無理して泣かないんじゃないの、自然と泣けないの。ゴメンね、クリ2私今とても落ち込んでる」
「うん。いいんじゃないの?落ち込むって。とても人間らしくもあるし、オリスらしくもある。一石二鳥だね」
「そうね一石二鳥だね。私らしくあり、人らしくある。私は人間らしさに飢えているわ」
「うむ。そしてそれは僕たちがうずうずに行くことに起因している?」
「してる」
「うん。やっぱりだ。オリスは単純だね」
「そうね」
* * * * *
真正面にいる子どもたちは電車の中だと言うのに大声で笑っている。別に不快ではないけれど、不愉快ではあるかな。私は耳を傾けも塞ぎもしない。いつしか子供の声は消え、私の頭の中でラジオが流れ出す。これは夢なんだろうね、さっき眠かったし。
「今夜のラジオは、特別だよ、とても特別だーーー」
「今日は、10月だけれど、とても寒いね。これは何かのOmenかな?僕は少し怖いよ」
「ーーーーーーーーーーーーーー」
「ハッハ、きみはとてもおもしろい事を言う、すごいよ、きみは今までで最高のゲストだよ」
「きみはさっき落ち込んでいるといったけれど、なぜだい?」
「もうすぐ11月だね、きみの誕生日だ」
「なにか嫌なことが起きないといいけれど」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「きっといいことがおこるさ、それは一見嫌なことに見えても、いいことなんだよ」
「ハッハ。今夜のラジオは特別だ」
* * * * *
目の前には整備された道や活気ある町がある。それは記憶の奥底にあり、忘れていた光景だった。私はいろいろ思い出す、あのデパートや、そこで吐いたゲロや、あの日の早朝や、あの喧嘩や、あの庭をね。何もかもが遅かった。遅すぎた。しかし視点を変えれば、遅くはありはしたけれど、間に合ったの。だから大丈夫よ、間に合ったの。駅にはアニメの女の子のポスターが貼られている、大きな広場も長いエスカレーターもあるし若者も沢山いる。すべては動いていてその中には勿論時間も含まれていて私に月日の長さを、短さを感じさせる。すべては間に合ったのだ。間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った間に合った。クリ2は言う、「ねぇ、ローソンに行こうよ。僕はお腹が空いたんだ。もう13時さ」私は頷く。
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