パターン6 マヨ.2
「なんで出来ないんだ!?」
俺は白いドロドロしたものを流しに放り出しながら叫んだ。
マヨネーズを作るのなんて実はそんなに難しい事じゃない。卵黄、塩、お酢、油を混ぜる。基本的にはそれだけで出来るはずなんだ。
見た目はなんとかそれっぽくはなる。でも全然味が違う。何故なんだ!?
一通り目の前の材料を見る。材料を厳選する必要があるのか? そういえばお酢は穀物だったり果物だったり野菜だったり、原材料の違うものがあるはずだ。
「大将、このお酢、何から出来てるんですか?」
「ああ? これは……カダス……穀物だな」
穀物酢なら、問題無いはずだ。じゃあ問題は卵か? 油か? 卵は確かに、トロみが強いくせに薄味なんだよな。
「この卵って、どんな鳥の卵なんですか?」
「……は?」
「いや、自分の知ってる鳥の卵と味が違うから、どんな鳥なのかなって思って」
「おいおい、鳥がこんなにたくさん卵を産むわけないだろ。そんな頻繁に産んでたら、この世は鳥だらけになってらぁ」
……? えっ?
「じゃあ、この卵は……?」
「亀に決まってるだろ」
「か、亀ぇぇ!?」
詳しく聞いてみると、この世界ではニワトリのように毎日のように卵を産む鳥はいない。もしくは見つかっていない。その代わり、卵をたくさん産む海亀が定期的に来る浜があって、その卵が流通しているらしい。
海が亀だらけにならないのだろうか?
いやそれより、もしかしたら亀の卵の成分が鳥の卵と違うから、美味しいマヨネーズにならないのかもしれない。
「ちなみに、この油はなんの油なんですか?」
「これは蛙だな」
ガ、ガマの油ってやつか!? なんてものを使ってるんだ。そりゃあマヨネーズの味も変わっちまうよ。
くそ、こうなったらマヨネーズは諦めて、違う調味料にするか? 醤油とかどうだろう。いやまて、原材料が大豆なのは知ってるけど、流石に醤油の作り方までは知らないぞ。そもそも大豆がこの世界に存在するかも怪しいし。
「いったい何を作ってんだ?」
大将が俺の作ったマヨネーズの失敗作を見つけ、それを指にとって舐めた。
「俺の故郷の調味料を作ろうと思ったんスけど、どうもうまくいかなくて」
「ん……、んん!?」
大将は仕込んでいた野菜を持ってきて、失敗作に付けて食べた。
「これは、ドレッシングとしてイケるぞ!」
「そうですか?」
「これはなんて名前なんだ?」
うーん、これをマヨネーズとは呼びたくない。失敗作、マヨネーズモドキ、そうだな。
「マヨドキ、とでも呼んでください」
俺のネーミングセンスも失敗っぽいが、失敗作にはちょうどいいだろう。
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