天に向かって合掌

 百瀬と色々あった日曜から一夜明け、俺と残念どもはいつものように部室に集まっていた。

そして俺は全員が集まったところで、瑠璃とのデートであった出来事を簡潔にまとめ、他の残念どもにそれを説明していった。

「 というわけで、俺と瑠璃は楽しくデート(仮)をしてきました。」

俺的には、瑠璃がしっかりと設定に入れ込めるぐらいのものができたので、なかなかよくできたのではないかと個人的には考えていたのだが、

「瑠璃ちゃんかわいそうに、大変だったのね。」

「おい、その反応はおかしいだろ。どう聞いたらそう感じるんだ」

まったく、俺をどんな奴だと考えているんだ。

ここは、一つ百瀬に証言してもらおう。

「そんなことないよな、百瀬?」

百瀬、頼むぞ。

「……。」

百瀬はいつもどうり恥ずかしそうに、したを向いている。

うん、そうだよね。そうだと思った。

俺が、百瀬が何も言ってくれなかったから、弁解しようと画策していたが、葉月が遮る。

「先輩はとりあえず、有罪でいいですから、今後の話しましょうよ。」

中々、辛辣なことをいってくる葉月。さすがに、ひどくないか。

「でも、少しうらやましいわ。雅人くんが。」

「俺のどこがうらやましいんですか?」

なんだか、嫌な予感がする。

「だって、後輩からは軽くあしらわれて、同級生からは冷たい目線を向けられるなんて、羨ましい以外ないじゃない。」

うん、どうせこんなことだとわかってた。

「先輩、次はだれが仮デートをするんですか?」

葉月は、俺の顔を下から覗き込んできた。

「そうだな、どうしようか。」

いったん整理すると、白鳥先輩と瑠璃はやったから、残りは葉月と氷上の二人だな。正直、どっちともデートをするのは、一筋縄ではいかなそうだ。

俺が考え込んでいると、途中で、

「先輩、じゃあ次は私と行きましょう。」

「そうするか。」

という感じで、葉月とのデートはあっさり決まった。


俺たちは、その週の土曜にショッピングをするために、近くの大きな駅で待ち合わせをしていた。

ということで、俺は、待ち合わせの時刻の20分前から葉月を待っていた。

「そろそろ、待ち合わせの時間だな。」

と俺が一人でつぶやいていいると、背後からいきなり、

「先輩、ちわっす。先輩早いっすね。」

汗だくの葉月が元気よく声をかけてきた。

「そんなに早くはないと思うが、そんなことよりお前なんでそんなに汗まみれなんだよ。」

明らかに、駅から歩いただけの汗の量じゃないし、どーやったら、そんなことになるんだよ。

「それはですね、先輩。私が家からここまで走ってきたからです。」

葉月は、なぜか自信満々に俺に言ってくる。

ちょっと待てよ、この駅から、高校まで結構あるから、葉月の家までからも遠いはず。

「お前の家から、ここまで結構あるんじゃないのか?」

「そんなにですよ、たかが、十数キロじゃないですか、軽い運動ですよ。」

葉月は、何でもないかのように笑いながら話している。

いや、軽い運動ではないだろう。運動もある程度俺もできるが、これは、おかしい。

これが、残念美少女といわれる所以か。

「先輩は、変わってますね。」

「お前に言われたくないがな。」

それにしても、葉月の格好は、下はデニムの短パンで上は白いシャツに黄色のカーディガンで、葉月にピッタリな服装だ。

しかも、葉月は運動をかなりしているので、細いけどくびれていて、さらに運動した後なので、すこし頬が上気していて、すこしなまめか、いや、あの葉月だぞないな、うん、ない。

と勝手に色々考えていると、

「先輩、どうしたんですか。」

「うひゃ!」

「うひゃってなんですか、先輩面白いですね。」

「お前が、いきなり話しかけるからだろう。」

クソ、なんか葉月がいつもと違うから調子が狂うな。

「もういい、行くぞ。」

「先輩、拗ねてますね。」

あとで、おぼえてろよ。

こんな感じで、最初に何悶着かありながら、俺たちのデート(仮)が始まった。


「先輩、服を見に行きましょう。」

という、葉月の一声でまず服を見に行くことになり、今俺は葉月の着替えの待っている。

俺、ギャルゲームとかではあるけど、実際には女子と服を買いに行ったことないから、少し緊張する。

「先輩、いいですよ。」

葉月がそういうので、俺は後ろに振り向くと、葉月は一枚の白いワンピースを着ていた。

葉月は、結構日焼けもしているので、白と小麦色の肌が対照的で、ひまわり畑にいそうだ。

「似合ってるな。」

俺は、少し照れくさいが、そう言った。

「ありがとうございます。なんか、先輩照れくさそうですね。」

葉月は、俺をからかうような感じでそう言ってきた。

俺をなめやがって、俺はやるときはやる男だ。

「着替えるので、閉めますね。」

「少し、失礼して。」

俺は、堂々と葉月の入っている試着室の中に侵入した。

そして、葉月の着替え一式試着室の外に出した。

「ちょっと、なにしてるんですか!」

「え?葉月の服を外に出しただけだけど。」

何を言ってるんだ、葉月は今さっき、やっていたことだろうに。

「あー、そうなんですね。とはならないですよ。早く服を返してください。」

「え、いやだよ。せっかく手に入れたものだから。」

手に入れたものは、大切にしないとね。

「なんで、口調も変わってるんですか。いいから、返してください。」

「いやだって。」

いや、待てよ。いいことを思いついた。

「分かった、返してやる。でも、条件がある。服を見るためにきたんなら、服を色々着てみよう。」

「なにか、いやな予感がする。」

葉月、正解です。


俺は、また葉月の着替えを待っていた。しかし、今回は俺が持ってきた服を葉月が着るので心なしかテンションが高い。

「うぅ、先輩着替えましたよ。」

「待ってました。」

すると、メイド姿の葉月が出てきた。メイド服でも、スカートが長いもので、コスプレでよく見るものとは、別のものだ。

「先輩の個人的な趣味が垣間見えますね。」

「何が悪いのか。メイドは男のロマンだ。」

しかし、改めて見てみると、本当にかわいい。メイド服の補正もあるだろうが、人に似あうかどうかも差がある服なのに、しっかり、着こなせるとは。

まーでも、いろんな家事をしてくれるメイドというか、子どもの遊び相手になってあげるような感じのメイドだろうな。

「へー、メイド服って着ることなかったですけど、こんな感じなんですね。」

葉月が、その場でくるりと一周する。

「スカートの丈が結構長いんですね。」

「そういう、メイド服だからな。色々あるメイド服なかでも。」

思っているよりも、メイド服は結構種類があるのだ。

「そうなんですね、ってあっ。」

葉月は、自分のスカートを踏んでしまって、転んだ。

「ドジっ子メイドありがとうございます。」

俺は、天に向けて、合掌した。

「何してるんですか先輩!まず、合掌するなら、私にだし、そもそも、そんなことしないで、手を貸してください。」

そんな感じでメイド服は着替えてもらって、次の服を渡した。

「どうですか?」

今回俺が渡したのは、ナース服、これも一度は憧れる。

「では、採点する。」

「なんですか、採点って。」

まず、似合うかで抜群に似合っているので、10点だが葉月がナースになったら、変な薬を注射しそうなので、マイナス3点。

「7点。」

「よくわからないけど、失礼なこと考えませんでした?」

この次は、チャイナ服を持ってきた。

「これは、ど」

「10点。ごちそうさまです。」

チャイナ服は、体にピッたりとくっついていて、体のラインがハッキリわかる。非常に眼福だ。

俺はまた、天に向かって合掌をした。

「だから、やるんだったら私でしょ。」

俺が、最後に持ってきたのは、バニーガールの衣装だ。

これも、一度は女性に来てもらいたい衣装のトップスリーには、入るだろう。

「では、よろしくお願いいたします。」

「先輩、さすがに無理ですよ。恥ずかしすぎます。」

なにを言ってるんだこいつは。

「大丈夫だ、俺は全然恥ずかしくない。」

「先輩の心配してないですよ!私が、恥ずかしいって言ってるんですよ。」

「そうなのか、俺はてっきり、痛い格好をした連れがいると周りにみられるという心配を俺にしてくれるのかと思った。」

「それって、この格好が痛いって言ってますよね。」

やばい、口がすべった。

「もういいから、早く出て来いよ。」

俺は、試着室から葉月を引っ張り出した。

「ちょっと先輩ってば、」

葉月のバニーガール姿はそれは、もうすごいものでした。

普通に生活していたら、見ることがない姿だし、エロかったし、最高でした。

「おぉ、神よ。」

俺は、無神論者だが、思はず神を信じてしまった。

そして、俺は天に向かって合掌とともに、お辞儀もした。

「だから、それ私に!」

俺たちはこんな感じで、ふざけていると、

「すいません、他のお客様のご迷惑なります。」

というような感じで、店員のひとにしっかり怒られた。

この後、駅の近くのゲームセンターで遊んだりしたりもした。

という風に時間が過ぎ、そろそろいい時間になったので、解散を葉月に伝えると、

「そうですね、日も傾いてきましたし。」

「そうだな、あまり遅いのは、よくないしな。」

中々、いろいろなことがあったがなんとか終わったと思っていたが、突然、

「じゃあ、走って帰りましょうか先輩。」

と葉月がわけのわからいことをのたまっている。

「なんか言ったか?はやく電車で帰るぞ。」

俺は、いい感じでかっこよく帰ろうとするが、葉月に止められる。

「走って、帰りますよ。」

「いやだよ、電車で帰る。」

走るわけないだろう、こんな距離。

「いいんですか?ほかの人に、先輩の今日のこといろいろ言いますよ。」

「ぜひ、今から走って帰りましょう。」

これが、俺が帰り道が地獄になった瞬間だった。

そして、何歩か走ったあと、俺は思った、これだから残念美少女はよー



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る