デート大作戦。

「百瀬はどんなことを休日はしているの?」

俺はとりあえず間をもたせるため当たり障りのない質問をしていた。

「……。」

うん、うん。さすがに女子にいきなりプライベートなことを聞くのはまずいよな。

よし、好きなこととかを聞こう。

「百瀬はなんか好きな食べ物とかある?」

 これなら、大丈夫。幼稚園児でもきっと答えてくれる、うん。

「……。」

マジかよ、俺相当百瀬に嫌われてるんじゃないか?

俺はそう思って百瀬を見てみると、退屈そうというよりも分かりにくいが楽しそうにしてる?

もー分からん。

こんな、ギャルゲーとかしていない、こじらせ高校生みたいに考えながら、実際にはそうなのだが、5月の大型連休であるゴールデンウィークに百瀬と二人で出かけている原因は1週間前に起こった。


 白鳥先輩のお宅(マゾの住処)訪問から日曜日を挟んだ月曜日俺はいつも通りの学校の授業を終え部室に向かっていた。

そして、部室に着きドアを開けてみるとまだ百瀬しか来ていなかった。

「おっす、百瀬。」

俺はとりあえず軽く挨拶をしておいた。

すると、

「………。」

百瀬は黙って軽く会釈した。

そういえば、百瀬とこうやって二人でいるのってあの不良グループから助けた以来だったな。

「そういえば百瀬、あれからまたあの不良グループからなんかされたとかはなかったのか?」

「……。」

百瀬は激しく首を横に振った。

そうか、あれ以来何もしてこなかったのか。

まー確かにやった俺が言うのもなんだがあれは一生もんのトラウマになるだろうな。

だが、あれはもう絶対しないと固く誓った。

もうしないよな、うん、きっと。

だけど、あまり百瀬と二人で学校の話というか面白い話をしたりするのはなかったな。 

なんか、百瀬が面白いと話があるだろうか。

俺が頭をフル回転させていると、突然メッセージアプリであるKINEで百瀬からメッセージが来た。

あれ待てよ、俺百瀬とKINE交換したっけ、あーあの4人と俺でグループ作ったんだった。

まーとりあえずそれは置いといて、なになに

『土曜日白鳥先輩と一緒に居ましたよね。』

あれあれ、なんかの見間違いかな?

よしもう一回。

『土曜日白鳥先輩と一緒に居ましたね。』

変わってないな、ってあれこれやばくね。

百瀬も含めた4人を誰もがうらやむ美少女にするとか言っといて、4人と接点作るために言ったみたいなやばいやつに思われちゃうじゃん。

「こっ、これは違うんだ、うん、違う違う。

なんもやましいことなんてないよー。」

なんか浮気がバレそうになってる男みたいになってないか俺。

「……。」

百瀬はいつも通り黙っている。

俺正直百瀬の顔が見れない。

すると、また百瀬からKINEが来た。

『大丈夫、全部分かってます。』 

おいおい、全部わかってるってなんだよ先輩の家に上がらしてもらってもうすぐ卒業するとこまで行ったことも全部知ってるのか?そしたらますます百瀬の顔見れないよ。

「百瀬あれは色々とあってな、別に家に行ったからなんかあったとかそういう話じゃなくて。」

という言い訳がましいことを言いつつ顔をあげ百瀬を見てみると、ぽかーんとしていた。

すると、またKINEが来て

『家?白鳥先輩のやつもなんかの作戦だと想ってたんですけど。』

やっべ、要らんこと言っちゃってる。

「家っていうのは友達の家って話で、ってそんなことどうでもいいから作戦って?」

我ながら話を逸らすのが下手すぎる。

『どうしたんですか、先輩。先輩が私達に実行させる作戦があるって言ってたじゃないですか。だからてっきりその一部だと。』

「それは、ちがっ、あっ!」

作戦っていえばそうだった言ってたなこいつら4人を、誰もがうらやむ美少女するための作戦。

まだ、あんまりピンと来たのがなくてまだ何も考えてなかったけど。

でも、百瀬がなんか勘違いしてるみたいだから使わせてもらおう。

「そうなんだよ、あのときは作戦中だったんだよ。よくわかったな。」

とりあえず、こんな感じで大丈夫だろうとホッとしていると、

「何が作戦って、雅人くん。」

「うぁっ!いつからいたんですか!」

あーびっくりした。まじ死んだかと思った。

「本当にいま来たところよ。部室のドア開けたら一声目に作戦って聞こえて。」

あー最悪のタイミングで最悪の人が来た。

『説明すると、土曜に白鳥先輩と鈴木先輩が一緒にいたのは作戦じゃないかって。』

というメッセージを百瀬が白鳥先輩に送った。

「あれは、ただたんに、モニョモニョ。」

俺は明らかに白鳥の先輩の発言は爆弾になるので、全力で止めた。

すると、小声で

「どうして、話をしちゃダメなの?雅人くんと一線を超えかけたっていうだけじゃない。」

「それがダメなんだよ。」

やっぱり、残念ヒロインだよこの人は。

「瑠璃ちゃん、土曜はモニョモニョ。」

危ねぇ、油断も隙もあったもんじゃないよ。

「このことを黙ってくれたら、ちょっとだけご主人様になりますから。」

「百瀬ちゃん、そうだよ作戦の一部だよ。」

『そうですよね。良かった。』

危ぶねー、白鳥先輩に貸しをつくってしまったがまーいい。

にしても、なんで百瀬が『よかった。』なんだ?よく分からん。

「そうなんだよ、作戦だったよ。よく分かったな、はははは。」

とはいったものの、作戦とは言ったもののどうしたものか。

俺が考え込んでいると、

「雅人くん、作戦っていうのは私達4人全員とお試しデートをするっていうことだっわよね。」

「そうそう、お試しデートをするんだよな。」

あれ、いま俺なんて言ったんだ。

「……お試しでーと。」

百瀬はうつむきながら呟いた。

お試しデートだとまたややこしいことになった。

ここは適当なこと言って納得させよう。

「百瀬確かに、白鳥先輩とはお試しデートをしたが、それは」

と俺が言い訳を並べていると突然、

「おつかれっす、雅人先輩!」

「変態、死ね。」

と言いながら陽向と氷上が入ってきた。

「おいちょっと、待って。大きな声では言うな。」

「さすが雅人くん、変態って言うところは否定しないのね。」

だって、まー性欲が強いのは間違ってないし。

「じゃあ、雅人くんと私はお揃いね。」

「一緒にしないで下さい。」

白鳥先輩と一緒にされたら、俺はもう終わりだ。

さすがの俺でも他のやつにそれを言われたら傷つくから言われたくない。

「そんなにハッキリと言わなくても。まぁ、でもこれはこれで。ハァ、ハァ。」

もうダメだよコイツ。

「変態さんたちは置いといて、なんかお試しデートとか聞こえたんですけどなんですかそれ。」

陽向は小学生が分からないことを先生に聞くみたいな感じで聴いてくる。

「俺が説明しよう。お試しデートとは、お前ら4人が誰かとデートすることになっても困らないのようにするために前持ってデートを経験してみようという作戦だ。」

我ながら即興にしては良くできた。俺を誰が褒めて。

「雅人くん、本当にそんなこと考えてたの?」

白鳥先輩が小声で聞いてきた。

「黙ってて下さい。」

とりあえず、至上の変態にはだまっててもらうおう。

「なるほど、ということは私たち4人が順番に先輩と二人で出掛けるってことですか。」

「変態、死ね。」

おー珍しく陽向が理解できたのか。ちょっと待て、今なんかどさくさにまぎれてなんか言ってなかったか。

「そうなんだよ。みんなには遅くなったけどその作戦を先週の土曜日に実行しててそれをたまたま百瀬が目撃したんだよ。」

「そういうことだったんですか。私も雅人先輩と白鳥先輩を土曜に見かけて、私雅人先輩が白鳥先輩の家行けると分かってちょっとなんかあるかもしれないなと思いながら白鳥先輩の家に行ってるのかなって勘違いしてました。」

「ち、ち、違うよ。ソンナコトナイヨー。」

そんなこと全く思ってないし、いやちょっといやかなりおもってたけども。

「the most 変態。」

「最上級の変態にすんな!」

氷上俺に対してあたりが強すぎる。

「そういうことは一旦置いといて、白鳥先輩とは作戦を実行出来たから次の人に移ろう!」

少し最後声が裏返ってしまった。

「なんか、怪しいな。変態。」

「ちょいちょい変態を会話に混ぜ込むな。」

「ふん。」

油断も隙もあったもんじゃないな。

するといきなり、

『私次やります。』

というメッセージが百瀬から来た。

「百瀬がやりたいって言ってるけど。」

「えっ、瑠璃ちゃん体悪いの?保健室に連れて行こうか?」

「なんでだよ。」

「だって、変態とお試しだとしてもデートに行くって死刑宣告みたいなもんでしょ?」

「それは言いすぎだろ。」

確かに、不思議ではあるな。あんまり、積極的ではない百瀬からそういったことを言われるのは。

「百瀬大丈夫か?」

「……大丈夫、です。」

顔を真赤にしているが、はっきりと聞こえる声で百瀬は言った。

「そうすか。じゃあとあえず、今週の土曜は瑠璃ちゃんと雅人先輩二人でお試しデートってことで。」

「まー瑠璃ちゃんがそういうなら仕方ないか。」

「いいんじゃないかしら。」

というように話がトントン拍子に決まり、待ち合わせ場所も決まってその日は解散となった。

 という感じでそこから、火水木金と過ぎて待ち合わせに指定したカフェにいる今に至る。

 んーこうなった経緯は思い出せたけどこの状況を打開させる方法がないだろうかと考えこんでいると

「……た、楽しい。」

ちょっと待てよ、この状況を楽しんでいるってことは、俺が困ってる姿を見て楽しいってことかよ。

と、変なことを考えつつ恐る恐る百瀬の顔を見てみると、いまの俺を見て楽しんでいるといかどっちかもいうと普通に楽しそうだ。

まーね、普通に楽しんでいるって分かってたけどあえてね、あえて。

だとすると、特に何か特別なことをする必要もなさそうだが、でもやっぱり仮デートとはいえ、デートではあるから楽しんで欲しい。

やっぱりここは定番のイベントの

「百瀬どっか行きたいと来ないか。」

「……。」

さすがにすぐには無理だろうから、少し待つつもりでいると、 

「……水族館。」

と百瀬いつも通り顔を真つ赤にして言った。

「水族館か、いいね。」

俺はとりあえず近くに水族館があるか調べるためにスマホで調べることにした。

「百瀬調べてみたら、でっかい水族館は遠いから行けないけど、近くにビルの中に入ってるやつがあるからそれでどうだ?」

「……。」

むむ、やっぱり大きい水族館のほうが良かったのだろうか。

「……いい。」

ふー良かった、別にそこの水族館が嫌なんじゃなくて、ただ恥ずかしかっただけだったなのか。

「じゃあ、行こっか。」

俺たちはとりあえず、俺が調べた近くの水族館に向かうことにした。

 そして、水族館の券売機の前まで来たのだが俺は1つ重大な疑問が浮かんだ。デートであるからして、男の俺が全て払うべきなのか、それとも割り勘なのか。巷では、男が払うべきなのかどうなのかという論争が繰り広げられているようなので、きっとこんな疑問は誰しも持つものだろう、というようなことをうだうだと考えていると、普通に百瀬が1人分の入場料を渡してきた。

 なんか、ごめんなさいと心の中で謝り入場券を購入した。

 俺の調べた水族館はTHE水族館という感じのこれといって特徴のないものだ。

 しかし、中に入って見たら、思ったよりも豊富な種類の魚たちがいた。その中で気になった魚の説明欄を見てみることにした。

 「なるほどな、地方によっても1種類の魚でもいろんな呼び方があるんだな。知ってたか百瀬。」

俺が振り返るとそこに百瀬はいなかった。気になって周りを見渡すと百瀬はクラゲの水槽をまじまじと見ていた。

俺はその百瀬が見ているクラゲの水槽に向かった。

「百瀬、クラゲに興味あるのか?」

と聞いてみたところ、百瀬が首を縦に振った。

「どんなとこが気に入ったんだ?」

「……かわいい。」

そうなのか、これが百瀬には可愛く感じるのか、俺にはただコンビニの袋が泳いでいるみたいにしか見えない。百瀬は中々独特な感性をお持ちなようだ。

 俺たちは、そんなこんなで色々な魚を見て、水族館を楽しんだ。

 そんな、水族館から百瀬を家に送って行く途中に俺は今日のデートの感想を聞いてみた。

「百瀬、水族館は楽しかったか?」

こくっと、百瀬が首を振った。

「……かわいかった。また、行く。」

そうか、楽しんでもらえたのはなりよりだ。

だが、申し訳ないのだが、俺の水族館に行ったら、寿司が食いたくなった。

 だが、今回は百瀬だったがあと3人も同じような事が続くのか中々頭が痛いなの考えていると、百瀬の家の前まで着いた。

 「今回は、楽しかった。また、学校でな。」

という、去り際のあいさつをして、帰ろうとすると、百瀬が俺の服を引っ張った。

 「……好き。」

顔が夕焼けの太陽なぐらい真っ赤にして、俺にその言葉を言った途端、すぐにそっぽを向いて家の中に入って行ってしまった。

俺は、百瀬が最後に言った言葉の意味を深く考えた、そして結論が出た。

「うん、あれは彼氏、彼女の設定上言っただけだな。百瀬も人騒がせなやつめ。」

 俺もさすがに、言われたときは勘違いしそうになったが、俺はちゃんと分かる男である。

 後日、百瀬に「あんまり、設定に入りすぎるなよ」と言ったら、あの「……好き」同じぐらいの顔の赤さで俺を殴ってきた。あんまり、痛くはなかったが、原因を聞いても教えてくれない。

 そして、諸々の説明をして誰が理由が分かる人がいたら教えて欲しいと、ネットの質問箱に投げかけたら、『爆発して、死ね』と帰ってきた。結局、百瀬の怒った原因は分からずじまいになった。本当にあいつは、なぜ怒っていたんだろうか。ちなみに、その回答を送ってきた人を通報しておいたのが、めでたく、その人のアカウントがバンされていた。

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