おじゃまします。

俺はある土曜日に、高校生男子が日々の行いをするための準備をするために、レンタルビデオショップに来ていた。

俺は知っている。あの暖簾を通る時は、オドオドしては行けない。堂々していれば、だいたいは声はかけられないと。

そんな、勝手なナレーションをしながら、堂々と入っていた。

俺が入ると、なぜか他に入っていた人が、一人に視線が集まっていた。

真っ黒な長い髪、発育がいい胸元、そんな胸元も強調するお腹のくびれ、服はデニムのパンツに、某メーカーのパーカー着ており、サングラスと帽子をしている。

あいつは、白鳥すいだ。明らかに様子が怪しい。

「ハァハァ、これもイイわね。これも、あっ、これも。選べないわこんなの。」

彼女は真剣な眼差しで、作品を見ていた。

しかもその内容は、女性が縛られているものや、強制されているようなものばかりだ。

他の人が見ているのに何をやってんだ。これが、現役の女子高生だと思うとなんだか悲しい。

「おい、何してるんですか?先輩。」

「あっ、雅人くんじゃない。もしかして、私を縛るための道具を買いに来てきれたの?私とっても嬉しいわ。」

こいつ、ダメだわ。

「お、俺がそんなことするわけないでしょ!」

周囲の人が俺の事を見る。

「すいません。」

クソ、なんで俺が謝ってんだ。

「先輩は大体見たら、何やってんのか分かりました。」

「さすがね。ちゃんと理解してくれてるのね、私のこと。」

「いや、違います。」

「そんなに否定しなくても。」

「とりあえずここで話をしても迷惑になるので出ましょう。」

「まだ借りれてないんだけど。」

コイツ。

俺はまだ、未練がましく残ろうとする彼女を無理やり引っ張って行った。だが、その時に彼女がなぜか嬉しそうにしていたのは気のせいだということにしておく。

俺たちは公園のベンチに腰かける。

「先輩、別に色んな趣味があって、いいと俺は思いますけど、あれを同じ学校の人見られたらまずいとは思わないんですか?」

「大丈夫じゃない?だってちゃんと分からないようにサングラスと帽子もしていたし。」

少なくとも俺には一瞬でバレていたんだが。

「先輩しかも、周囲の人にも見られてましたよ。」

「それは、その人も私の見てた作品が気になってたんじゃない?もしくは、私の作品を選ぶセンスに驚いていたかね。」

先輩は胸を張った。

「絶対どっちも違うと思います。」

この人はどんな思考をしているんだろうか。

「そうなの。じゃあ分からないわね。ところで雅人くんはこれから何か用事があるの?」

「特にないですけど。」

あっ、俺知ってる。これってデートの誘いか。この人は、色々問題は抱えてるけど、顔はいいからな。俺もやぶさかでは無いではないが……。

「私の家に来ない?」

まさかの家デート!

「い、いいですよ。」

「親がいないけど問題ないわね。」

これも、知ってる。俺、彼女作る前に、大人になるんだな。まー、やっと俺に時代が追いついた感じだな。うん。

俺たちは、白鳥先輩の家の前まで来ていた。

先輩の家は一言で言えばデカイ。どんくらいでかいと言うと、学校の体育館ぐらいの面積だ。

「先輩の家ってお金持ちなんですね。」

「そうね。祖父が色々なことをやっていて。」

どこかの会社の社長だったりするのだろうか。

白鳥先輩が門を開ける。

「じゃあ、入って。」

「おじゃまします。」

中も凄いな。部屋が何個あるのか分からない。

「おぉ。」

「そんなに目を丸くして。ふふふ。」

廊下を歩いて行き、白鳥先輩の部屋まで行く。

「どうぞ入って。」

「おぅ、なんか先輩の匂いする。」

「ちょ、なんか変な匂いじゃないわよね!」

「どうでしょう?」

先輩が部屋の匂いを嗅ぐ。

「もぅ、雅人くんってば。やっぱり才能があるみたいね。」

どんな才能かは聞かないでおこう。

しかし、改めて部屋を見回すと、なんか普通の部屋だな。なんか、安心した。

「ふふふ、雅人くんが何を考えてるか分かるよ。私の部屋に普通のものしかなくて、不思議に思ってるんでしょ。」

うっ、バレてる。

「そうですね、意外です。もっとエグイもんとかあるとかと。まーそれは、ないですよね。だって家族とかいますしね。」

ちょっと変なこと考えて、失礼だったかもしれないな。

「先輩、変な、」

白鳥先輩が俺の声を被せるように言う。

「安心して、ちゃんと別の部屋にあるから。」

「何が安心だよ!」

先輩が天井にあった紐みたいなのを引っ張る。

ギギギ。

天井から、階段が降りてくる。

「こっちに来て、雅人くん。」

言われるがまま連れていかれる。

「どう、私のコレクション。」

「うげっ。」

部屋には縛る用の紐、あのビデオは当然のもと、色々な大人なアイテムで埋め尽くされていた。

「この部屋は私しか知らないの。この子達の置き場所に困っていたら、偶然この部屋を見つけて、それからずっとこうなの。」

これはヤバいところに連れてこられた。これは逃げた方がいいやつだな。

「先輩失礼します。」

「ちょっと、待って。雅人くんにはやって欲しいことがあるの。」

どうせ、ろくでもないやつだろう。

「お断りします。」

「まだ何も言ってないじゃない!」

何となく予感がするが、一応聞くか。

「なんですか?」

「雅人くんには、この部屋のものを使って私を開発して欲しいの。」

やっぱり。

「この変態が!」

「確かにそうかもしれないけど、雅人くんが私の家に来たってことは少しはそういう気持ちがあったんじゃないの?」

「ち、違うし。もっと健全なやつだと思ってたし。」

「少しは思っていたのね。」

「そうだよ!少しは思ってたよ。こんなにハードなやつとは思ってなかったけど!俺の気持ちを返せ変態が。」

「そんなに言葉で私を喜ばせないで。」

こいつが、根っからの変態ってこと思い出したわ。

「俺、帰ります。さようなら。」

「待ってよ!」

そんな先輩の引き留めを無視して、俺の未来の彼女のために逃げた。あのままいたら、俺の性癖がねじ曲がったてしまう。俺も性欲が強い方だが、あれはさすがにダメだろう。

そうして、鈴木雅人は、また一日童貞ライフが伸びたのだった。

そういえば、俺ビデオ借りれてなかったわ。

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