第一回育成プログラム。
俺たちは、育成プログラムをするために部室に集まっていた。
「第一回目の今日は友達などと交流を深めるようになるために人狼ゲームをする。」
人狼のルールは、プレイヤーは市民と人狼に分かれ、市民が人狼を見つけることが出来たら勝ち。逆に人狼は自分たちと市民を同じ数にしたら勝ちというゲームである。詳しく言えば、昼と夜があり、昼のうちに誰が人狼か決め、一人を毎日追放し、人狼達が、消したい人を選ぶといった形だ。ちなみに占い師という職業があって、その人は毎夜その人が人狼であるかを占うこともできる。
「それって私いるの?」
霜月子百合が言う。
「先生には、進行役をしてもらいます。」
「私も色々やることがあるんだけど。」
面倒くさそうな感じで言う。
「なんか言いました?こ、百合先生。」
「すいません。喜んでやらせていただきます。」
ちょっと不満そうにしているが、やってくれた。
みんなも不思議そうに思っているようだが、確信はしていないようだ。
このネタを使って、脅す、間違えたまた頼み事を聞いて貰おう。
「それはなんか意味あんの?」
氷上が言う。
「あーそうか。お前ボッチだから、そういうパーティーゲーム知らないのか。人気あるんだぜ人狼。」
「それくらい知ってるわよ!私も友達がいたらやりたいと思ってたし。」
氷上が恥ずかしそうに小声で言う。
何か聞こえた気がするけど、気にしないで行こう。きっとそれがいい。
「先輩面白そうですね。」
大きな声で陽向が言う。
「そうだろう、俺もちゃんと考えたからな。」
「なかなかいいんじゃないかしら。」
白鳥先輩はなかなか乗り気だな。
「……。」
百瀬は相変わらずだな。
「じゃあ始めるわね。まずは役職を配るわ。」
人狼が一人、市民が三人、占い師が1人か。
どれになるんだろうか。
カード配られる。
カードには『市民』と書かれていた。
そうか市民か。じゃあ誰が人狼なのだろうか。
すると、
「ここに、『人狼』って書いてあるんですけどどういうことですか。」
あいつさっき説明したのに理解出来ていないのか。
「陽向、それはさっき説明されたでしょ。人狼になったら市民を倒すって。」
氷上が呆れた顔で言った。
「あっ、そういえば言われたような気がします。」
「しかも役職は言っちゃだめよ。陽向さん。」
白鳥先輩が注意する。
こいつは本当にバカだな。
また、一通りの説明を陽向にして、また最初から始める。
「気を取り直して、もう一度配るわね。」
また、カード配られる。
そこには、『市民』と書かれていた。
今度も市民か。
周りを見渡すと、陽向はニコニコしているようなので、人狼では無いのは確定だろう。
他のやつは別に変わった様子がないので、よく分からない。
すると、霜月先生が進行を始めた。
「あなた達の村には今朝死体が発見されました。その死体には狼の噛み跡が残っており、犯人は狼であることが分かりましたが、人に化けたようで見つかりません。村の門番は誰も門から出ていないと言っているので、村に狼はいます。皆さん人狼を見つけてください。では、この昼の間に人狼だと思う人を話し合って、追放してください。」
どう話を切り出すかと悩んでいると。
「これって、最初ってなにを話すのかしら?」
「だいたい最初は当たり障りのない会話になったり、人狼が占い師って言ったりですね。」
氷上が答える。
「知識だけは豊富だな。やる機会は無いのに。」
「いらんこと言うな。」
やばい、かなりキレてる。話をそらそう。
「ちなみに占い師はだれ?」
「それって、言わなくてもいいですよね?」
「あー、そうだな。確かに占い師って言うと人狼に狙われるからな。駆け引きだな。」
なかなかムズいなこれ。
そうこうしていると、
「では会議をやめてください。追放する相手を決めます。犯人だと思う人を指さして下さい。」
みんなかなりバラバラに指さす中、氷上と俺が陽向を指した。
「では、追放するのは陽向さんです。さようなら。」
「ちょっと待ってください。なんで私なんですか!」
「「役に立たないから。」」
声がハモった。氷上もアイツが人狼じゃないことが分かってたのか。
陽向が隅に行って、凹んでいる。
「ひどいよ、もう。」
とりあえず、ほっとこう。
「夜になりました。では、みなさん目を瞑って下さい。占い師の人は目を開けて下さい。占い人を指さして下さい。」
確かその人が人狼かどうかをハンドサインで指さすんだったよな。
「その人は『……。』です。」
「では次は人狼の人、目を開けて下さい。殺したい人を決めてください。『……。』ではみなさん目を開けて下さい。朝になりました。残念ですが、白鳥さんの遺体が発見されました。その瑞々しく、真っ白い肌はミミズ腫れのあとが残っており、体を痛めつけられたようでした。しかし、彼女はまるで眠っているような様子で亡くなっていました。それでも彼女は色気を感じさせ、グヘヘ。」
「おい、いい加減にしろ。」
「すいません。」
こいつ、自分の性癖をさらけ出すところだったぞ。
白鳥先輩は顔を赤らめてモジモジしている。
「おい、そこの変態、何で顔を赤らめてるんだよ。」
「中々楽しかっただろうなと思って、私も受けてみたいな。」
「盛るなよ、変態。」
「ハァハァ、雅人くん鬼畜すぎ。さすがね。」
こいつもダメだわ。
「ちょっと、話変わるけど白鳥先輩は人狼じゃないっことよね。じゃあ、コイツと私と瑠璃ちゃんの中にいるってことよね。」
「確かにそうなるな。」
んーどうなのだろう。俺は違うから、あいつらのどちらかなんだろうが、さっきした、質問もブラフだという可能性もあるし、わからん。
「……。」
百瀬はモジモジしたままだ。一応聞いてみるか。
「なぁ百瀬お前って人狼か?」
百瀬がいきなり慌てだし、挙動不審になる。
「……、違う。」
あ、これ確定だわ。
氷上も気づいたようだった。
「百瀬が人狼なのか。」
百瀬は涙目になりながら、首を必死に横に振っている。
「ちょっとかわいそうじゃない。泣かせたわね。」
「いや、泣かせようとして、した訳じゃないし。」
「死ね、クズ野郎。」
ちょっとひどくないか。ゲームでこんなに悲しくなることがあるのか。
「では誰を追放するか指をさしてください。」
はぁ、色々疲れたわ。でもこれでやっと終わりだ。
俺は百瀬を指を指すが、なぜか俺に指が二本向かっている。
「では、追放されるのは鈴木くんです。さようなら。これにより人狼側が勝利しました。百瀬さんおめでとうございます。」
百瀬が目を見開き、動揺している。当然だろうさっき俺にバラされたのに自分が勝ったのだから。
「おい、ちょっと待ってくれ。百瀬は分かるけどなんで氷上も俺を指してるんだよ。百瀬って分かってたじゃないか。」
「それは、」
「それは?」
「あなたが嫌いだから。」
「おいなんだよ、その理由。お前がちゃんとしてたら勝てただろう!」
「いや、なんかあなたがいると嫌だなと思って。」
コイツ、舐めてんのか。
「あー、改めてお前がボッチな理由が分かったわ。」
「ボッチボッチ言うな!」
それから色々あってまさかの波乱の第一回目の育成プログラムが終わった。
こいつらが、誰もが羨むカノジョなれる日は来るのだろうか、いや無理かもしれない。
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