第9話 もう、力が入らないよ。
赤崎は謎の気合とともに、私の顔を見上げる。
力の
でも。
赤崎との本当の距離に気づいた私。
どれだけ手を伸ばしても、赤崎の温かい手にも心にも何一つ届かない事を知った今は、このドキドキさえツラい。
体から、力が、気合いが、怒りが。
抜けていく。
「神崎、座ってくれ。頼む。話を聞いてほしいんだ」
赤崎の言葉に私は、ぽすん、とソファに座る。
もう、力が入らないよ。
「……何の、話?」
「神崎……お前の事好きなんだ。俺と、付き合ってくれ」
「そう、なの?……ごめん、私……こうして話してるのも、もう苦しい……よっ?……えっ?……えええええええええええええええええっ!!!!」
私の大絶叫に、お母さんも今度は
「神崎……さんのお母さんも聞いてください。ここ一ヶ月の間、神崎さんに好みのタイプや彼女が欲しいかとか聞かれて、俺が思ってる神崎さんのいい所や自分の気持ちを頑張って伝えてたんですけど……全然伝わらなくて」
赤崎の言葉に慌てる。
「だぁ?!だってだって!髪長くないし女の子女の子してないし!他の事も全然私にあてはまってないじゃん!」
赤崎の言葉にパニックになった私は、とてつもないエネルギーをもらったように心臓がドキドキして。
「俺から見た神崎さんのイメージと、自分の理想も言ってた。さすがに恥ずかしいからそのまま告白なんてできなかったけど、失敗だった。戸倉さんや神崎さんに悪い事した、すまん」
赤崎の顔、すっごく赤い。
一回も見たことがない、こんな顔。
本気、なの?
本気?
私も今、耳まで熱い。
顔が、熱い。
「あらあらあらあら!まぁまぁまぁまぁ!」
ぎゃー!!お母さんいたんだよ!
お母さん、目がめっちゃキラキラしてる!
何で『私、いいもの見ちゃった!うっそー!』みたいな顔してるの?!ねえ!
「そ・れ・でぇ〜……心は赤崎君の事、どお思ってる・の・か・なぁ〜?」
…………!!!
さっき話したでしょ?
わかってるでしょ?!
全部自供したじゃん!!
なのに、それ?!
言い方、ものすっごい腹立つ!!
……………………でも。
ダメ。
ココで言わなきゃ、答えなきゃ。
自分の気持ちを
美優は、自分が辛いのに赤崎を連れて来てくれた。
赤崎が自分の気持ちを一生懸命伝えてくれた。
お母さんが『心は?』って背中を押してくれた。
それで、私は?
私、は?
私。
「私も……私は……赤崎が好き、です。赤崎の彼女に、なり、たい……です」
「よっっっっっ……しゃああああああああ!!!!」
「きゃああああああああああ!!」
赤崎とお母さんの
私は手で顔を隠して、うつ向く。
顔、熱い!
え?これ……夢じゃないの?
やだやだ!
やだやだ!
やだやだ、現実がいいです。
神様、お願いします。
お願いします。
お願い……!!
●
そして。
私はめいっぱい殴られる覚悟で、美優と学校の屋上で会う約束を、した。
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