第6話 泣いて泣いて、泣いた後に



 窓の外は夕焼け空。


 私、泣き疲れて寝ちゃったんだ。


 目の周りがヒリヒリして、視界がせまい。

 ベッドから起き上がって、かがみを見た。


 (ひっどい顔……)


 もう少しで、いや、美優の告白はもう……。


 幸せそうな美優と、照れた赤崎の顔が浮かんでくる。

 

 もう、終わったんだ。

 応援していた片想いが、うまくいった。

 最高じゃん。

 

 叶った恋に、本気でおめでとうって言おう。


 赤崎と美優が嬉しそうにしてたら、ひたすらからかってあげよう。


 それで、いいんだ。


 明日までに目のれ引くかな。

 そんな事を考えていたら、ノックと共に扉が開いた。


こころ、具合はどう?……どうしたのよ!その顔!!」

「あ、お母さん……お帰り」


 扉開けるの早すぎるんでないかな、お母さん。

 どっちにしてもこの泣きはらした顔じゃ明日まで逃げ切れる気がしない。

 

「……めちゃめちゃ泣いただけ。何とか大丈夫」

「大丈夫、じゃないわよ!何があったの?!」


 これは、ヤバい。

 こんな剣幕のお母さん、最近見た事ございません。

 じ、自供しよう。


「失恋しました……超特大の」

「失恋?!まさか、早退したのも失恋したから?!」

「そ、そうかも……」

「いったい何のつも………………!!……………………、そんなに、泣いて……………………あー……」


 お母さん、眉間にしわを寄せて頭を抱え、うなってる。


 何これ、超こわい。

 だけど……怒られるのは仕方ない。

 自分のせいだから。

 

 あ、お母さんの目が開いた。

 今度は私が覚悟して目をつむる。

 

 ぐっ!!

 

 ふあ?!鼻、つままれた?!お鼻、痛いでござる!

 いや、ホント痛い!痛い!もげちゃう!


おはあはんお母さんひたひ痛い、ひた……!」


 手が、離れた。

 いたた……。


「あー、もう。これでおしまい!…………顔、冷やさないとね。話せる範囲でいいから、何があったか教えてね」

「お母さん……」

「準備してくるから。部屋ここの方がいいでしょ」

「話すならリビング、行きたい」

「そ?じゃ、早めに来なさいよ?」


 そう言ってお母さんは、足早に階段を下りて行く。


 鼻の奥がツンとして、眼のふちがヒリヒリする。

 もう涙は出ないと思ってたけど、これは無理だ。


 お母さん、ありがと。

 学校サボってごめんね。


 もう、きっと……大丈夫。

 ありがとう。


「心ー!早く来ないと氷水と洗面器で我慢大会よー!」


 ありがとう、お母さん。


 涙と感動、引っ込みました。


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