第4話 今さら、好きなんて言えるわけない。
まだ、お昼すぎたばっかり。
スマホで写した赤崎の笑顔を見ては、ぼんやりとして。
ベッドに倒れこんでは、ぼんやりとして。
起き上がって、窓の外を見ては、ぼんやりとして。
さっきからそんな事ばっかり繰り返してる。
●
結局、早退してしまった。
お父さん、お母さん、学校の先生、美優、赤崎、香奈……申し訳なく思う。
でも、今日はもうダメだった。
あれだけ練習した笑顔が、気がついたら泣き顔に代わりそうで怖かった。
だから。
赤崎に「部活が終わったら絶対屋上に行ってね」と告げて、お昼も食べずに学校から逃げる様に帰ってしまった。
こんな理由で学校を早退しちゃダメなのに。
お母さんに病院に連れて行かれそうになったけれど、落ち着いたから横になりたいと言うと、お母さんは私の様子を見てから階下に降りていった。
ごめんね、お母さん。
●
美優が赤崎に告白する。
この日が来る事は、わかっていた。
他のクラスの美優に初めて声をかけられた日。
「もし神崎さんが赤崎君と付きあってないのなら、赤崎君の事を教えてほしい。決心がついたら告白したい」
そう言われたのだ。
私は、バカだ。
美優に協力を求められるまで赤崎への気持ちに、気付いてなかった。
それだけじゃない。
私は、自分の気持ちにフタをしてしまった。
今さら、好き、なんて言えるわけないから。
そのくせ、赤崎から好みのタイプとか彼女が欲しいかとか、少しでもヒントを聞き出した日には、どこかしら近付けようと毎日努力していた。
無駄なあがき。
実らせちゃいけない努力。
でも。
赤崎の言った言葉が、頭の中をくるくると回ったんだ。
"彼女?そりゃ欲しいだろ!"
"
"笑顔が、ヤバいくらい可愛くて、優しくて"
"俺のバカ話を含めて、話してて一緒に盛り上がれる彼女とか最高だな!"
"剣道部の試合の時に、弁当持参で応援とかしてもらえたら俺、絶対燃える!"
そんな言葉を聞いた私はその日から。
長いとは言えない髪をサラサラにしようと頑張った。
言葉が優しくなるよう、話し方を変えていった。
それだけじゃない。
スカートの長さ。
好みの香り。
メイク。
趣味の話。
テレビや映画の話。
好きな食べ物。
料理の勉強。
笑顔の練習。
楽しい話題探し。
もう本当に今さらなのに、頑張ってしまっていた。
いつもより少しでも多く私を見てほしかった。
『今日、何か違うよな!』って驚いてほしかった。
『神崎は俺の事一番わかってるよな!』って。
言って、ほしかったんだ。
だけど。
いくら頑張ったところで、赤崎の理想の彼女の姿は美優と重なるだけだった。
赤崎の隣にいられる女子は、私じゃなかった。
私じゃ……なかった。
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